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馬の敗血症での腹水MMP9濃度

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馬の腹水検査は、腹腔臓器の病態を反映することが多いため、疝痛などの消化器疾患の診断に応用されています。

マトリックスメタロプロテアーゼ九型(MMP-9: Matrix metalloproteinases-9)は、敗血症での内毒素血症において、好中球が活性化されることで生成され、敗血症の重篤度を反映すると言われています。ここでは、敗血症(内毒素血症)を呈した疝痛馬における、腹水MMP-9濃度の有用性を評価した知見を紹介します。この研究では、ドイツのベルリン大学の馬病院において、2017~2018年にかけて、疝痛の診断と治療のため外来した47頭の馬において、血液中および腹水中の炎症介在物質が測定され、敗血症スコアとの比較が行なわれました。

参考文献:
Barton AK, Richter IG, Ahrens T, Merle R, Alalwani A, Lilge S, Purschke K, Barnewitz D, Gehlen H. MMP-9 Concentration in Peritoneal Fluid Is a Valuable Biomarker Associated with Endotoxemia in Equine Colic. Mediators Inflamm. 2021 Jan 5;2021:9501478.

結果としては、腹水のMMP-9濃度は、敗血症でない疝痛馬では51.9ng/mL(平均値)であったのに対して、敗血症を起こした疝痛馬では954.6ng/mLと有意に高く(非敗血症馬の18倍以上)なっていました。この研究での疝痛馬は、敗血スコアが6以下であれば非敗血症馬、7~9であれば敗血症疑いの馬、10以上であれば敗血症馬という分類がなされていました[1]。また、腹水MMP濃度の113ng/mLをカットオフ値とした場合(この測定値以上であれば敗血症と見なす)、敗血症を鑑別診断するときの感度は83.3%で、特異度も82.9%に達することが示されました。

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このため、内毒素血症の危険が予測される疝痛馬においては、腹水中のMMP-9濃度を測定することで、敗血症の鑑別診断をする一助になると考えられました。一般的に、馬は内毒素に対する感受性が非常に高く、敗血症(いわゆる全身性の炎症反応症候群)を引き起こすレベルの内毒素に曝露されていても、血中の内毒素濃度の測定値は正常範囲内に留まってしまうことが知られており、本研究で示されたような、敗血症を鑑別する検査値の有用性が高いと考えられます。

この研究では、腹水における他の炎症介在物質(MMP-2/8, IL-1beta, TNF-alpha, TIMP-1/2)の濃度は、非敗血症馬と敗血症馬のあいだで有意差はありませんでした。また、血中のMMP-9濃度は、非敗血症馬(107.8ng/mL)と、敗血症馬(1433.8ng/mL)とのあいだで有意差はあったものの、その増加度合いは1.3倍程度に留まっていました。これは、循環血液で希釈されて濃度が低くなったためと推測されており、血中MMP-9濃度は、腹水中のMMP-9濃度よりも、敗血症の診断能は劣ると考えられました。

この研究では、サンプル数が少なかったため、疝痛の原因疾患による、腹水MMP-9濃度の比較はされていませんでした。また、疝痛治療によって死亡した馬と生存した馬で、測定値に差異があったかも評価されていませんでした。一方、ヒト医療の報告を見ると、MMP-9濃度は敗血症の重篤度と相関しており[2]、敗血症の予後判定の指標になることが知られています[3](ただし、これらは血中のMMP-9濃度)。このため、今後の研究では、より多数の疝痛症例において腹水MMP-9濃度を測定して、一次病態の鑑別診断、敗血症の重篤度との関連性、および、治療後の生存率との相関などを評価するのが有益だと考察されています。

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参考文献:
[1] J. Breuer and G. F. Schusser, “Establishing a sepsis-score for adult equine patients,” Pferdeheilkunde, vol. 28, no. 4, pp. 421–428, 2012.
[2] Pugin J, Widmer MC, Kossodo S, Liang CM, Preas HL2nd, Suffredini AF. Human neutrophils secrete gelatinase B in vitro and in vivo in response to endotoxin and proinflammatory mediators. Am J Respir Cell Mol Biol. 1999 Mar;20(3):458-64.
[3] Nakamura T, Ebihara I, Shimada N, Shoji H, Koide H. Modulation of plasma metalloproteinase-9 concentrations and peripheral blood monocyte mRNA levels in patients with septic shock: effect of fiber-immobilized polymyxin B treatment. Am J Med Sci. 1998 Dec;316(6):355-60.

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