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馬の補液8:補液計算の例題1

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馬の補液療法(Fluid therapy)の例題1。

患馬は、16時間にわたる漸進発現性(Gradual onset)の中程度疝痛(Moderate colic)を呈し、直腸検査(Rectal examination)において摂食物を充填して硬化した骨盤曲(Firm ingesta-filled pelvic flexure)が触知され、大結腸便秘(Large colon impaction)の推定診断が下されました。入院時の脱水重篤度は、臨床症状と血液検査結果から5%と推測されました。



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(1)体液量、細胞外液量(ECF)、血漿量の計算
正常時体重: 470 ÷ 0.95 = 495 kg
正常時体液量: 495 × 0.6 = 297 L
正常時ECF量: 297 × 1/3 = 99 L
正常時血漿量: 99 × 0.3 = 30 L
入院時体液量: 470 × 0.6 = 282 L
入院時ECF量: 282 × 1/3 = 94 L
入院時血漿量: 94 × 0.3 = 28 L



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(2)総補液量の計算
損失水分量: 495 × 0.05 = 25 L
維持水分量: 495 × 0.0025 × 12 = 15 L (12時間分)
持続損失量: 0 L
追加水分量: 15 L (維持水分量と同量)
合計補液量: 25 + 15 + 0 + 15 = 55 L

(*費用を抑え腸内容物軟化を促すため、経口補液30Lと経静脈補液25Lの併用を選択)
経口補液量: 胃カテーテルを介して二時間おきに5Lの補液(計六回)
毎時経静脈補液量: 25 ÷ 12 = 2.1 L/hr



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(3)ナトリウム、カリウム、クロールの損失量の計算
正常時交換可能陽イオン量: 297 × 140 = 41580 mEq
入院時交換可能陽イオン量: 282 × 128 = 36096 mEq
損失交換可能陽イオン量: 41580 – 36096 = 5484 mEq
総ナトリウム損失量: 5484 × 2/3 = 3656 mEq
総カリウム損失量: 5484 × 1/3 = 1828 mEq

正常時総クロール量: 99 × 110 = 10890 mEq
入院時総クロール量: 94 × 85 = 7990 mEq
総クロール損失量: 10890 – 7990 = 2900 mEq



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(4)ナトリウム、カリウム、クロールの投与量の計算
12時間にわたって30Lの経口補液溶液投与と25Lの乳酸リンゲルの経静脈補液:
経口ナトリウム投与量: 123 × 30 = 3690 mEq
経静脈ナトリウム投与量: 130 × 25 = 3250 mEq
総ナトリウム投与量: 3690 + 3250 = 6940 mEq(充分)

経口カリウム投与量: 34 × 30 = 1020 mEq
経静脈カリウム投与量: 4 × 55 = 220 mEq
総カリウム投与量: 1020 + 220 = 1240 mEq (588mEqの不足)

経口クロール投与量: 157 × 30 = 4710 mEq
経静脈クロール投与量: 98 × 25 = 2450 mEq
総クロール投与量: 4710 + 2450 = 7160 mEq (充分)

塩化カリウム溶液(2mEq/mL)の投与量: 588 ÷ 2 = 294 mL
塩化カリウム溶液(2mEq/mL)の添加量: 294 ÷ 25 = 12 mL/L
カリウム投与速度: 1828 ÷ 12 = 152 mEq/hr
最大安全カリウム投与速度: 470 × 0.5 = 235 mEq/hr
(*副作用を示すことなく12時間以内にカリウム全損失量の補給が可能)



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(5)カルシウムおよびマグネシウムの損失量と投与量の計算
イオン化カルシウムは正常値範囲内で、カルシウム添加は不必要と判断。

血液検査によるマグネシウム損失量の推測は困難。
通例的なマグネシウム添加: 8mg/kg × 495kg = 3960mg
20%硫酸マグネシウム溶液(200mg/mL)の投与量: 3960 ÷ 200 = 20 mL
20%硫酸マグネシウム溶液(200mg/mL)の添加量: 20 ÷ 25 = 0.8mL/L



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(6)酸塩基不均衡の補正の計算
血液検査結果から補正を要する酸塩基不均衡の発症はないと判断。



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(7)栄養補助量の計算
病態経過から栄養補助を要する長さの摂食停止はないと判断。



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(8)コロイド補液量の計算
血液検査結果から補正を要する低蛋白血症の発症はないと判断。



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*注意:馬の補液療法は、適応症例の品種や年齢、用途、気性、経済的要因によって多様性があり、また、全身病的状態の診断方法と、その結果に基づく補液量、補液剤の種類、補液の添加剤選択、および、補液療法の効能評価にも異なる手法や方針があります。ですので、この補液シリーズでの記述は、あくまで医療技術の概要解説として御参照して下さい。

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