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馬の補液10:補液計算の例題3

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馬の補液療法(Fluid therapy)の例題3。

患馬は、急性発現性(Acute onset)の軽度疝痛症状(Mild colic)、発熱(Fever)、頻脈(Tachycardia)、頻呼吸(Tachypnea)などの症状を示し、経鼻カテーテルによってオレンジ色~茶色で腐敗臭(Fetid odor)を示す多量の胃逆流液(Gastric reflux)の排出が認められ、胃除圧(Gastric decompression)によって疼痛症状の顕著な改善と、その後の沈鬱症状(Depression)が見られました。また、腹腔超音波検査(Abdominal ultrasonography)では、軽度~中程度の十二指腸径拡大(Mild to moderate increase of duodenal diameter)と重度の十二指腸壁肥厚(Severe thickening of duodenal wall)が確認されたことから、十二指腸近位空腸炎(Duodenitis-proximal jejunitis: DPJ)の推定診断が下されました。入院時の脱水重篤度は、臨床症状と血液検査結果から8%と推測されました。



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(1)体液量、細胞外液量(ECF)、血漿量の計算
正常時体重: 440 ÷ 0.92 = 478 kg
正常時体液量: 478 × 0.6 = 287 L
正常時ECF量: 287 × 1/3 = 96 L
正常時血漿量: 96 × 0.3 = 29 L
入院時体液量: 440 × 0.6 = 264 L
入院時ECF量: 264 × 1/3 = 88 L
入院時血漿量: 88 × 0.3 = 26 L



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(2)総補液量の計算
損失水分量: 478 × 0.08 = 38 L
維持水分量: 478 × 0.0025 × 12 = 14 L (12時間分)
持続損失量: 478 × 0.0020 × 12 = 11 L (12時間分)
追加水分量: 0 L
合計補液量: 38 + 14 + 11 + 0 = 63 L
毎時補液量: 63 ÷ 12 = 5.3 L/hr



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(3)ナトリウム、カリウム、クロールの損失量の計算
正常時交換可能陽イオン量: 287 × 140 = 40180 mEq
入院時交換可能陽イオン量: 264 × 115 = 30360 mEq
損失交換可能陽イオン量: 40180 – 30360 = 9820 mEq
総ナトリウム損失量: 9820 × 2/3 = 6547 mEq
総カリウム損失量: 9820 × 1/3 = 3273 mEq

正常時総クロール量: 96 × 110 = 10560 mEq
入院時総クロール量: 88 × 76 = 6688 mEq
総クロール損失量: 10560 – 6688 = 3872 mEq



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(4)ナトリウム、カリウム、クロールの投与量の計算
12時間にわたって63LのNormosol-Rの経静脈補液:
(*下記の重炭酸Na添加のため、Caを含むリンゲル&乳酸リンゲルは使用不可)
総ナトリウム投与量: 140 × 63 = 8820 mEq (充分)
総カリウム投与量: 5 × 63 = 315 mEq (2958mEqの不足)
総クロール投与量: 98 × 63 = 6174 mEq (充分)

カリウム投与速度: 3273 ÷ 12 = 273 mEq/hr
最大安全カリウム投与速度: 440 × 0.5 = 220 mEq/hr

(*12時間以内でのカリウム全損失量の補給は副作用の危険が高い)
(*最大安全カリウム投与速度に基づいて添加量を再計算)
最大安全カリウム投与量: 220mEq/hr × 12hr = 2640 mEq
補液中へのカリウム投与量: 2640 - 315 = 2325 mEq
塩化カリウム溶液(2mEq/mL)の投与量: 2325 ÷ 2 = 1163 mL
塩化カリウム溶液(2mEq/mL)の添加量: 1163 ÷ 63 = 18 mL/L



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(5)カルシウムおよびマグネシウムの損失量と投与量の計算
正常時ECFイオン化カルシウム量: 96 × 60 = 5760 mg
正常時血漿イオン化カルシウム量: 29 × 60 = 1740 mg
正常時総イオン化カルシウム量: (5760 + 1740) ÷ 20 = 375 mEq
入院時ECFイオン化カルシウム量: 88 × 46 = 4048 mg
入院時血漿イオン化カルシウム量: 26 × 46 = 1196 mg
入院時総イオン化カルシウム量: (4048 + 1196) ÷ 20 = 262 mEq
総イオン化カルシウム損失量: 375 – 262 = 113 mEq
23%ボログルコン酸Ca溶液(1.069mEq/mL)の投与量: 113 ÷ 1.069 = 106 mL

(*カルシウム溶液と下記の重炭酸イオン溶液は混合不可)
(*酸塩基不均衡の補正を優先させるため始めの30Lに重炭酸ナトリウムを添加)
(*残りの33Lにボログルコン酸Ca溶液を添加)
23%ボログルコン酸Ca溶液(1.069mEq/mL)の添加量: 106 ÷ 33 = 3.2 mL/L

血液検査によるマグネシウム損失量の推測は困難。
通例的なマグネシウム添加: 8mg/kg × 478kg = 3824 mg
20%硫酸マグネシウム溶液(200mg/mL)の投与量: 3824 ÷ 200 = 19 mL
20%硫酸マグネシウム溶液(200mg/mL)の添加量: 19 ÷ 63 = 0.30 mL/L



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(6)酸塩基不均衡の補正の計算
血液検査から補正を要する重度(HCO3<15mmHg)の代謝性アシドーシスの推測診断。
重炭酸イオン損失量: 478 × 0.5 × 12.3 = 2940 mEq

(*カルシウム溶液と上述の重炭酸イオン溶液は混合不可)
(*酸塩基不均衡の補正を優先させるため始めの30Lに重炭酸ナトリウムを添加)
(*急激なpH変化を防ぐため12時間で半量の1470mEqを投与)
8.4%重炭酸ナトリウム溶液(1mEq/mL)の投与量: 1470 ÷ 1 = 1470 mL
8.4%重炭酸ナトリウム溶液(1mEq/mL)の添加量: 1470 ÷ 30 = 49 mL/L



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(7)栄養補助量の計算
DPJは三日以上の経過を示すことが多いため、補液による栄養補助が必要と判断。
安静時必要栄養量: 478 × 21 + 975 = 11013 kcal
最大安全栄養補給量: 11013 × 0.6 = 6608 kcal
12時間分の最大安全栄養補給量: 6608 ÷ 2 = 3304 kcal
50%ブドウ糖溶液(2kcal/mL)の投与量: 3304 ÷ 2 = 1652 mL
50%ブドウ糖溶液(2kcal/mL)の添加量: 1652 ÷ 63 = 26 mL/L



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(8)コロイド補液量の計算
血液検査結果から補正を要する低蛋白血症の推測診断。
最大安全血漿投与量: 478kg × 10mL/kg/day = 4.8L/day



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*注意:馬の補液療法は、適応症例の品種や年齢、用途、気性、経済的要因によって多様性があり、また、全身病的状態の診断方法と、その結果に基づく補液量、補液剤の種類、補液の添加剤選択、および、補液療法の効能評価にも異なる手法や方針があります。ですので、この補液シリーズでの記述は、あくまで医療技術の概要解説として御参照して下さい。

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馬の補液10:補液計算の例題3



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このエントリーのタグ: 治療 疝痛

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