馬の病気:幽門狭窄
馬の消化器病 - 2013年04月09日 (火)

幽門狭窄(Pyloric stenosis)について。
胃幽門部の繊維化(Pyloric stenosis)および筋肥厚(Muscular hypertrophy)から、幽門の閉塞と通過障害を起こす疾患で、多くの症例において慢性の胃潰瘍(Chronic gastric ulceration)や逆流性胃炎(Reflux gastritis)に起因して発症することが知られています。
幽門狭窄の羅患馬では、一次性疾患(Primary disease)である胃潰瘍、および胃排出障害(Gastric emptying disorder)に続発する間欠性の胃拡張(Intermittent gastric dilatation)に起因して、回帰性の軽度疝痛(Recurrent colic)、食欲不振(Anorexia)、体重減少(Weight loss)、歯ぎしり(Bruxism)、プアパフォーマンス等の症状を呈します。胃内視鏡検査(Gastroscopy)では、幽門周囲の食道壁の肥厚と幽門の拡張不全が認められ、広範囲にわたる扁平上皮粘膜(Squamous mucosa)および腺性粘膜(Glandular mucosa)の糜爛(Erosion)や潰瘍形成(Ulcer formation)が見られる場合もあります。
幽門狭窄の治療では、一次性疾患である胃潰瘍の治癒を促すため、ヒスタミン2型受容体拮抗薬(Histamin-2-receptor antagonist: Cimetidine, Ranitidine, Femotidine, Nizatidine, etc)、およびプロトンポンプ遮断薬(Proton pump blocker: Omeprazole, Pantoprazole, Rabeprazole, Esomeprazole, etc)の投与が行われ、胃排出亢進のために副交感神経刺激薬(Parasympathomimetic drug: Bethanechol, etc)も併用されます。また、非ステロイド系抗炎症剤(Non-steroidal anti-inflammatory drugs)の長期投与(Prolonged administration)に起因すると考えられる胃潰瘍に対しては、PGE類似体(PGE analogue: Misoprostol, etc)を用いての、粘膜病巣の再生促進(Healing stimulation of mucosal lesions)も試みられています。
慢性病態を示し幽門周囲の繊維化や肥厚が進行していた症例においては、胃潰瘍病変の治癒に関わらず、幽門狭窄自体は永続性の経過を示す場合も多いことが知られています。このため、内科治療に不応性(Refractory)症例においては、胃の迂回手術(Surgical bypass)を必要とする場合もあり、術式としては、胃十二指腸吻合術(Gastroduodenostomy)、幽門形成術(Pyloroplasty)、胃空腸吻合術(Gastrojejunostomy)、胃空腸吻合術と空腸空腸吻合術(Jejunojejunostomy)の併用、等の手法が応用されています。
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