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競技馬の当日輸送のリスク

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馬という動物にとって、馬運車での輸送は、肉体的負担やストレスの多い行為であるため、馬体への影響を考慮してあげることが大切です。

ここでは、馬が競技会やレースの当日に輸送される状況のように、輸送と運動の複合作用について調査した知見を紹介します。この研究では、8頭の健常馬を用いて、一時間の輸送の直後に30分間の運動負荷を掛けて(4頭)、輸送前、輸送後、運動直後、および、運動の1,2,4,8時間後における、血液検査と腸管透過性の評価を行ない、安静状態の対照馬(4頭)と比較しました。

参考文献:
McGilloway M, Manley S, Aho A, Heeringa KN, Lou Y, Squires EJ, Pearson W. The combination of trailer transport and exercise increases gastrointestinal permeability and markers of systemic inflammation in horses. Equine Vet J. 2022 Oct 9. doi: 10.1111/evj.13888. Online ahead of print.

結果としては、輸送と運動負荷が課された馬における腸管透過性は、輸送前(0.7μg/ml)に比較して、輸送後(1.5μg/ml)、運動直後(2.1μg/ml)、運動1時間後(2.1μg/ml)において有意に増加していました(輸送前に飲ませた造影剤の血中濃度を、腸管透過性の指標とした場合)。また、運動直後と運動1,2時間後における腸管透過性は、対照群の計測値よりも有意に高くなっていました。また、輸送と運動負荷が課された馬における、血中の内毒素(LPS)および急性期蛋白(SAA)の濃度は、運動1,4時間後で、対照馬よりも高値となっていました。

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このため、輸送の直後に運動負荷が掛かることで、腸管透過性が亢進して、内毒素血症および炎症反応を続発することが示唆されました。この現象が起きる原因については、明確には結論付けられていませんが、いわゆる腸漏れ症候群(Leaky gut syndrome)と呼ばれる、特発性の腸管病態が関与すると推測されており、腸絨毛細胞間の密着結合(タイトジャンクション)の弛緩や、生理的反射による腸絨毛細胞の能動輸送増加などの要因が考えられています。

この研究の結果から、競技会に参加する乗用馬や、レースに参加する競走馬において、輸送の直後に運動することによる健康へのデメリットが、腸漏れという現象を通して、改めて示されたと言えます。対策としては、競技やレースの前日に馬を輸送して、一晩休養を取らせることや、当日輸送を要する場合にも、到着後には安静にさせる時間を十分に置いてから運動させること、などが挙げられました。

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この研究では、輸送だけ又は運動だけの馬群が設定されておらず、安静にしている馬との比較であったため、輸送と運動で、どちらの影響が大きいかは検証されておらず、また、輸送と運動のあいだも30分間に限定されていた、という限界点があります。しかし、輸送+運動の負荷時において、その4時間後には認められた腸管透過性やSAAの増加は、8時間後には見られなかったことから、馬運車の到着後においても、6~8時間は間を置いてから運動を行なうという方針が好ましいのかもしれません。

なお、ヒト医療では、穀類に含まれる成分に腸が曝露されると腸漏れ症候群になるという知見もあるため、馬においても、輸送日には穀類の給餌を減らすことで、この病態のリスクを減らせる可能性があります。また、輸送前に少量の乾草を摂食させたり、輸送中に給水させて、消化管蠕動の亢進を促すことで、腸管壁からの内毒素の侵漏を抑えられると推測されます。

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