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ピンキャストでの馬の管骨骨折の治療

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ピンキャスト(Transfixation pin cast)とは、馬の骨折の治療法の一つで、橈骨または管骨を貫通させたピンを、全肢または半肢キャストに埋め込むことで、骨折部への荷重を迂回させて治癒を促すという外固定法になります。ここでは、米国のパデュー大学の大動物病院にて、管骨又は指骨骨折を呈した37頭の馬に対して、ピンキャスト治療を実施した症例報告を紹介します。

参考文献:
Lescun TB, McClure SR, Ward MP, Downs C, Wilson DA, Adams SB, Hawkins JF, Reinertson EL. Evaluation of transfixation casting for treatment of third metacarpal, third metatarsal, and phalangeal fractures in horses: 37 cases (1994-2004). J Am Vet Med Assoc. 2007 May 1;230(9):1340-9.

この研究での症例プロフィールは、27頭が成馬で、8頭が子馬となっており(骨折と無関係の原因で死亡した2頭は除外)、骨折箇所は、管骨が15頭、基節骨が12頭、中節骨が8頭でした。そのうち、粉砕骨折は89%、関節性骨折は66%、開放骨折は26%となっていました。

治療内容としては、ピンキャスト治療のみが行なわれたのは47%で、残りの馬では内固定術が併用されていました。ピンキャストは、成馬では術後45日間(中央値)、子馬では術後30日間(中央値)にわたって維持され、その後は、通常のキャストが28日間(中央値)装着された馬が殆どでした。ピンキャストの終了までに、ピンの緩みが認められたのは37%の症例で、この場合、近位側よりも遠位側のピンが緩む割合が多くなっていました。また、ピン周囲の骨融解が認められたのは49%に及び、術後の30日目(中央値)に確認されました。なお、骨融解からピンが緩むまでの期間は、成馬では9日間で子馬では2日間(いずれも中央値)でした。

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術後合併症としては、ピン孔での骨折を起こした症例が14%(5/35頭)で、最も近位側のピン孔の位置で骨折していました。また、4/5頭では、骨幹部に挿入されたピン孔(最も近位側)にて骨折を生じており、骨折発症は術後4,13,31,45日目と様々でした。他の合併症としては、ピン孔の腐骨(11%)、ピン破損(9%)、ピンの曲がり(6%)が認められ、さらに、骨折箇所以外でも合併症としては、蹄葉炎(23%)、大腸炎(9%)、骨髄炎(6%)、骨治癒遅延(6%)などが含まれました。

予後としては、ピンキャスト治療による短期生存率は、成馬では75%、子馬では88%となっており(生存して退院した馬の割合)、X線画像上で骨癒合が確認されるまでの期間は、成馬では72日で子馬では45日でした(いずれも中央値)。また、六ヶ月以上の経過追跡ができた馬(24頭)では、生存率は100%(24/24頭)で、意図した用途に使役されていた馬は50%(12/24頭)となっていました。なお、前肢と後肢の違い、開放骨折の有無、関節性骨折の有無などによって、生存率の有意差はありませんでしたが、ピンが二本挿入された馬では、二本以上挿入された馬よりも、有意に生存率が高くなっていました。

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この研究では、オッズ比(OR)の算出により、予後を悪化させる危険因子が解析されましたが、生存率に有意に影響する因子はありませんでした。一方で、意図した用途で使役できる確率を下げる危険因子としては、体重(OR=0.997)、複数関節に及ぶ骨折(OR=0.33)、骨幹部ではない骨折(0.17)、X線上での治癒遅延(OR=0.13)などが挙げられました。また、ピンが緩んでしまう確率は、骨幹部のピンでは有意に高い(OR=2.4)ことも示されています。

以上の結果から、馬の管骨や指骨の骨折においては、ピンキャスト治療で比較的に良好な予後が期待されるものの(特に子馬の症例では)、中節骨の骨折においては、二枚のプレートを用いた冠関節固定術とのあいだで、治療効果に明瞭な差は認められませんでした。また、ピンキャスト治療においては、ピン孔での骨折などで、予後不良となるケースもあることから、ピンを骨幹部には設置しないよう注意して、特に、複数関節性骨折や骨端部骨折では、内固定法を併用することで、骨治癒の遅延/不全を予防する試みが必要であると考えられました。

Photo courtesy of J Am Vet Med Assoc. 2007 May 1;230(9):1340-9.

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このエントリーのタグ: 手術 骨折

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