fc2ブログ
RSS

馬でのHA塗装ピンキャスト固定法

20221024_Blog_Topic133_PinCastHAcoat_Pict1.jpg

ピンキャスト(Transfixation pin cast)とは、馬の骨折の治療法の一つで、長骨を貫通させたピンを、キャスト壁内に埋め込むことで、骨折部への荷重を迂回させて治癒を促すという外固定法になります。ここでは、骨増勢を促進するハイドロキシアパタイト(HA)で塗装したピンを用いて、14頭の馬へのピンキャスト固定を実施した知見を紹介します。

参考文献:
Lescun TB, Baird DK, Oliver LJ, Adams SB, Hawkins JF, Moore GE. Comparison of hydroxyapatite-coated and uncoated pins for transfixation casting in horses. Am J Vet Res. 2012 May;73(5):724-34.

結果としては、HA塗装ピンでは、対照ピンと比較して、挿入時トルクは低いものの、抜去時トルクは高いことが分かり、HA塗装ピンのほうが有意に低いトルク削減を認めました。また、術後8週間目までにインプラント安定性が維持された割合は、HA塗装ピンでは33%(5/15本)であったのに対して、対照ピンでは0%(全てのピンが緩んでいた)となっていました。一方で、術後8週間目までの骨融解像、跛行グレード、細菌感染の陽性割合では、HA塗装ピンと対照ピンとのあいだで有意差は認められませんでした。

20221024_Blog_Topic133_PinCastHAcoat_Pict2.jpg

このため、HA塗装ピンを管骨に挿入する場合のピンキャスト固定術では、術後の二ヶ月間では、骨折部の安定性が向上すると予測されるものの、骨統合の度合い(ピン周囲骨融解の少なさ)や荷重痛の緩和(跛行グレード低下)などは示されていませんでした。ただ、今回は健常馬に対する施術であったため、骨折による痛みが無く、実際の骨折症例以上に馬房内で歩行や寝起きをすることで、HA塗装による骨統合作用が示されにくかった可能性も考えられます。このため、今後の研究では、実際の骨折症例の外科的治療において、HA塗装ピンを用いること、生物学的に有意なレベルで治療効果が向上するかを検証する必要があると考察されています。

ヒトの医療分野では、骨折の内固定などが緩むのを予防するため、HA塗装を施したインプラントを使用する手法が試みられており、HAが表面に塗られた金属面では、骨芽細胞の活発化による堅固な結合が誘導される(いわゆる、オッセオインテグレーション)ことが知られています。この作用によって、骨と金属面のあいだに強い統合が生まれ、内固定の強度に繋がることに加えて、インプラント周囲での感染率を低下させる効能も期待されます。

20221024_Blog_Topic133_PinCastHAcoat_Pict3.jpg

Photo courtesy of Am J Vet Res. 2012 May;73(5):724-34.



関連記事
このエントリーのタグ: 手術 骨折

プロフィール

Rowdy Pony

Author:Rowdy Pony
名前: 石原章和
性別: 男性
年齢: 40代
住所: 茨城県
職業: 獣医師・獣医学博士
叩けよ、さらば開かれん!

取り上げて欲しいトピックがあれば下記まで
E-mail: rowdyponies@gmail.com

最新記事

ブログメニュー

サイト内タグ一覧

推薦図書

FC2カウンター

関連サイト

リンク

カレンダー

01 | 2023/02 | 03
- - - 1 2 3 4
5 6 7 8 9 10 11
12 13 14 15 16 17 18
19 20 21 22 23 24 25
26 27 28 - - - -

馬獣医療機器

月別アーカイブ

お断わり

20130414_Blog_Message_Pict1.jpg
このサイトに掲載されているイラスト、画像、文章は、すべて管理主自身が作成したもの、もしくは、著作権フリーの素材リンクから転載したものです。

カテゴリ

ホースケア用品

全記事表示リンク

アクセスランキング

[ジャンルランキング]
学問・文化・芸術
88位
アクセスランキングを見る>>

[サブジャンルランキング]
自然科学
10位
アクセスランキングを見る>>

FC2ブログランキング

天気予報


-天気予報コム- -FC2-

検索フォーム

関連サイト

QRコード

QR