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エコー誘導での馬の脳脊髄液の採取法

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馬における新しい脳脊髄液の採取法が試みられています。
Pease A, Behan A, Bohart G. Ultrasound-guided cervical centesis to obtain cerebrospinal fluid in the standing horse. Vet Radiol Ultrasound. 2012 Jan-Feb;53(1):92-5.

脳脊髄液は、脳や神経の保護、栄養補給、老廃物排出の役目を担っており、神経器の病気で変化することから診断に有用であることが知られています。特に、馬ではMRI検査が困難であるため、神経器疾患の診断のためには脳脊髄検査の重要性が高いと言えます。そして、今までは、馬の脳脊髄液を採取するために、(1)大槽部採液、(2)腰仙脊髄部採液、の二種類が用いられてきました。

一般的に、(1)の手法では、全身麻酔を要することから、神経器症状を示している馬では麻酔覚醒の際の事故の危険があります。一方、(2)の手法では、起立位での検体採取が可能ですが、血液の混入を生じ易く、また、脳脊髄液は髄腔内を脳から尾方へと流れていくため、脳組織疾患の診断検体としては有用性が低い場合もあります。このため、頚椎部からの脳脊髄液採取を起立位で実施することができれば、臨床的に極めて有用であると考えられます。

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この研究では、超音波誘導によって馬の首の側面(左耳のすぐ後ろ)において、第一頚椎と第二頚椎のあいだからクモ膜下腔へと針を穿刺して、脳脊髄液を採取する術式が報告されています。この場合には、首の上面から針穿刺する大槽部採液と異なり、施術中に馬が首を振り上げても、脊髄に針を刺してしまう危険が極めて低いため、全身麻酔なしでの実施が可能となります。

この研究では、13頭の馬に対して、新しい脳脊髄液の採取法が応用され、それぞれ10mLの脳脊髄液が採取され、事故や合併症を呈した馬は一頭もありませんでした。また、盲目的に針穿刺する従来法と異なり、針が進入していく過程を超音波画像上で確認できるので、短時間(二分以下)で検体の採取が可能であったことが報告されています。今後の研究では、この新しい脳脊髄液の採取法を、より多くの臨床症例に応用することで、この手法の有用性および危険性を、より綿密に評価する必要があると考察されています。

Photo courtesy of Vet Radiol Ultrasound. 2012 Jan-Feb;53(1):92-5.

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