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馬の脳脊髄液検査での採取方法の影響

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脳脊髄液は、脳や神経の保護、栄養補給、老廃物排出の役目を担っており、神経器の病気で変化することから診断に有用であることが知られています。特に、馬ではMRI検査が困難であるため、神経器疾患の診断のためには脳脊髄検査の重要性が高いと言えます。

ここでは、馬の脳脊髄液の採取箇所と、その検査値との関連性について調査した知見を紹介します。この研究では、米国のジョージア大学において、15頭の健常馬と9頭の神経器疾患の症例馬を用いて、二種類の立位での脳脊髄液採取法(第一第二頚椎間[C1-C2]および腰仙部[LS])での検査値が比較されました。

参考文献:
Chidlow H, Giguère S, Camus M, Wells B, Howerth E, Berghaus R, McConachie Beasley E. Comparison of 2 collection methods for cerebrospinal fluid analysis from standing, sedate adult horses. J Vet Intern Med. 2020 Mar;34(2):972-978.

結果としては、脳脊髄液中の蛋白濃度は、LS検体(52.1mg/dL)に比較して、C1-C2検体(49mg/dL)のほうが有意に低値を示していました。また、脳脊髄液中の赤血球数においても、LS検体(33cells/μL)に比較して、C1-C2検体(6cells/μL)のほうが有意に低値となっていました。一方、総有核細胞数、馬原虫性脳脊髄炎の抗体価、および、抗体価の血清と脳脊髄液の比率には、両手法のあいだで有意差は認められませんでした。

この研究では、C1-C2およびLSの何れの部位からの脳脊髄液採取も、鎮静と局所麻酔のみの立位で実施可能であるため、特に、重度の運動失調を呈した神経器疾患の罹患馬では、全身麻酔における麻酔覚醒のリスクを避けられる意味で有用だと言えます。また、脳脊髄液は、頭側から尾側へとクモ膜下腔を流れていくことから、C1-C2検体とLS検体の測定値を比較することで、病態の発症箇所が、C2よりも頭側なのか尾側なのかを鑑別できると考えられており、今回の研究のデータを考慮しながら、検査値を解釈する必要があると言えます。

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一般的に、馬のLS部位からの脳脊髄液の採取では、馬が真っ直ぐに起立して体動が無いのが理想ですが、腰萎症状や鎮静の影響で、後躯が傾いた姿勢になってしまい、クモ膜下腔への適切な穿刺が困難となることがあります。一方で、C1-C2部位からの採取では、椎間への脊髄針の誘導が正しく実施されれば、馬の姿勢自体は大きく影響しないという利点が挙げられています。なお、この研究では、検体の採取に要した時間は、C1-C2部位では平均4分で、LS部位(平均5.5分)よりもやや短くなっていました(有意差は無し)。

また、この研究に用いられた馬のうちの1頭では、脳脊髄液の採取後の剖検において、C1-C2部位の穿刺箇所での実質内出血が発見されており、この部位の穿刺においても、医原性損傷のリスクはゼロではない、という警鐘が鳴らされています。この馬は、鎮静が効きにくく、臆病な気性であったため、穿刺処置の際に、頚部を何度か挙上する動作を示したことが報告されています。このため、各症例の挙動を観察して、脳脊髄液検査を行なうことのメリットと、医原性出血のリスクとのバランスを慎重に考慮するべきと述べられています。

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