ミニチュアホースの疝痛での開腹術
話題 - 2022年12月18日 (日)

ミニチュアホースは、馬体の大きさが馬と大きく違うだけでなく、発症する病気も特徴的であることが知られており、疝痛治療においても、この品種に特有な知識と技術が必要になってきます。
ここでは、ミニチュアホースの疝痛での開腹術の治療成績を調査した知見を紹介します。この研究では、米国のミシガン州立大学の大動物病院において、1993~2006年にかけて、疝痛治療のため外来して開腹術が実施された57頭のミニチュアホースでの、医療記録の回顧的解析が行なわれました。
参考文献:
Haupt JL, McAndrews AG, Chaney KP, Labbe KA, Holcombe SJ. Surgical treatment of colic in the miniature horse: a retrospective study of 57 cases (1993-2006). Equine Vet J. 2008 Jun;40(4):364-7.
結果としては、ミニチュアホースの外科的疝痛としては、糞石症が67%(38/57頭)を占めており、その発症年齢を見ると、六ヶ月以下が半数(19/38頭)となっていました。また、糞石症の発生箇所は、小結腸が66%(25/38頭)と最も多く、次いで、骨盤曲となっていました。糞石症以外に起こった外科的疝痛としては、結腸食滞(7%)、砂疝(5%)、腸結石(4%)などが見られました。

ミニチュアホースに糞石症が好発する理由は特定されていませんが、粗飼料の繊維質を完全には咀嚼・消化できないことが発症素因として挙げられており、これが、六ヶ月齢以下で有病率が高かった要因でもあると考察されています。過去の文献でも、ミニチュアホースの疝痛のうち、64~76%が糞石症であったと報告されています[1,2]。
この研究では、ミニチュアホースの外科的疝痛における平均発症年齢は3.3歳で、六ヶ月齢以下の子馬が四割を占めていました。また、疝痛以外の症状としては、腹囲膨満(63%)、食欲不振(63%)、排便停滞(60%)となっており、心拍数は平均80回/分まで上がっていました。

診断では、直腸検査が可能だったのは25%の症例に留まっており、その他には、腹部エコー検査(56%)、経鼻カテーテル(54%)、腹部X線(51%)、腹水検査(47%)などが実施されました。開腹術による糞石症の整復では、小結腸切開(22/38頭)および骨盤曲切開(34/38頭)が行なわれ、術中の浣腸(5/38頭)も併用されました。
術後の入院中に起こった合併症としては、下痢(38%)、食欲不振(35%)、腹痛(27%)、イレウス(11%)などが認められましたが、退院を果たした症例は98%に達していました。しかし、二回目の開腹術を要した症例は15%に及び、そのうち殆どは、退院後に再入院しての施術でした(初回開腹術から3週間後から2年後)。そして、経過追跡できた症例のうち、一年間以上生存した症例は87%(39/45頭)であったことが報告されています。
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参考文献:
[1] Hughes KJ, Dowling BA, Matthews SA, Dart AJ. Results of surgical treatment of colic in miniature breed horses: 11 cases. Aust Vet J. 2003 May;81(5):260-4.
[2] Vatistas NJ, Snyder JR, Wilson WD, Drake C, Hildebrand S. Surgical treatment for colic in the foal (67 cases): 1980-1992. Equine Vet J. 1996 Mar;28(2):139-45.