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馬の難産の前兆

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馬の難産は救急医療の一つで、短時間で適切な判断と処置を下すことで、子馬と母馬の命を救うことが可能になります。

ここでは、馬の難産の発生に関わる要因と影響を評価した知見を紹介します。この研究では、米国のコロラド州の繁殖牧場にて、2002~2010年における1,047件の出産での、妊娠期間、出産する時間帯、難産の発生状況などの回顧的調査が行なわれました。

参考文献:
McCue PM, Ferris RA. Parturition, dystocia and foal survival: a retrospective study of 1047 births. Equine Vet J Suppl. 2012 Feb;(41):22-5.

結果としては、最も多い難産の発生要因は子馬の異常姿勢(難産の38%)となっており、難産を起こしうる姿勢としては、30%が前肢屈曲(生存率94%)と最も多く、次いで、3.8%が頭部屈曲(生存率25%)、3.8%が前肢と頭部の屈曲(生存率50%)となっていました。また、子馬の向きとしては、96%が頭位で(生存率92%)、78%が上胎向(生存率90%)、17%が下胎向(生存率100%)となっていました。このため、難産および子馬の死亡率増加の危険因子としては、子宮内での胎児の向きよりも、産道内での胎児の姿勢が重要であることが示されました(上図は正常な姿勢)。

この結果から、分娩のステージII(胎児の頭部や肢が外陰部から出てから娩出完了まで)の開始時点では、外陰部から肢が2本出ているか(前肢屈曲の除外診断、前後肢の見分けに注意)、および、肢が出た直後に頭部も出てきているか(頭部屈曲または尾位の除外診断)を確認する必要性が再認識されるデータが示されました。過去の文献[1]でも、馬の難産の原因としては、子馬の四肢の姿勢異常が41%で最も多く、次いで体躯の姿勢異常が23%であったことが報告されています。

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この研究では、分娩のステージIIは、平均16.7分となっており、約七割の出産ではステージII が20分以下で、殆ど(97%)の出産では40分以下でした。一方で、分娩のステージIIが40分を超えた場合には、娩出停滞の発生率(17%)、難産の発生率(10%)、子馬の死亡率(20%)が有意に高いことが分かりました。その結果、ステージIIが40分以上だと、子馬の死亡率が7.9倍も高くなることが示されています(40分未満の場合に比較して)。

一般的に、馬の分娩でのステージIIの長さは10~30分間で、最も重要なステージであることが知られており、このステージを慎重に監視して、娩出が遅延する場合には、速やかに適切な分娩介助を行なうことの重要性が再確認されたと言えます。過去の文献[2]では、ステージIIが30分を過ぎた後は、10分伸びるごとに子馬の死亡率が16%増加するという知見が示されており、また、他の文献[3]では、子馬が生存する場合に比べて、子馬が死亡する場合には、破水から娩出までの時間が13.6分長かったことも報告されています。

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この研究では、難産の発生率は約一割であり、クォーターホース(7.9%)よりもサラブレッド(13.7%)に好発していました。また、妊娠期間は平均343日でしたが、オスの子馬のほうが有意に長くなっていました。そして、通常の出産期(妊娠期間320~360日)での難産は4.4%で、子馬の死亡率は3.6%であったのに比較して、出産遅延(妊娠期間360日以上)での難産は2.4%に留まったものの、子馬の死亡率は4.8%に達していました。なお、早産(妊娠期間320日未満)での難産は0%でしたが、子馬の死亡率は8.3%に及んでいました。

この研究では、分娩のステージIII(子馬の娩出後)において、娩出から起立までは平均49分で、メスの子馬(44分)よりも、オスの子馬(54分)のほうが長時間を要していました。また、娩出から起立までに60分以上を要した場合には、死亡率が3.7%に及んでおり、60分以下で起立した場合(死亡率0.9%)よりも有意に高くなっていました。一方、娩出から授乳までは平均112分で、メスの子馬(103分)よりも、オスの子馬(120分)のほうが長時間を要していました。そして、娩出から授乳までに120分以上を要した場合には、死亡率が2.4%に及んでおり、120分以下で授乳した場合(死亡率0.7%)よりも有意に高くなっていました。なお、娩出から胎便排泄までは平均31分で、雌雄差はありませんでした。

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一般的に、娩出後の子馬では、「1-2-3指標」が謳われており、健常な子馬においては、娩出から起立までは一時間以内、授乳までは二時間以内、胎便排出までは三時間以内であることが知られています(実際は、胎便排泄までに三時間を要することは稀)。今回の研究では、この指標に合致したデータが示されたと言えます。

なお、この研究では、胎盤の早期剥離(いわゆる“血袋”症状)の発生率は1.6%であり、過去の文献[1]でも2.0%の発生率が報告されています。胎盤が早期剥離してしまうと、子馬が低酸素症になるリスクが高いため、速やかに漿尿膜を用手で破裂させて、分娩介助することが推奨されています。

この研究では、過半数(52.8%)の出産は、牧場が静かになる夜間(20時から翌6時)に起こっていました。この傾向は、過去の知見でも述べられていますが、飼養環境内の人間の活動状況が、夜間に出産する比率に影響するという報告もあります[4]。

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参考文献:
[1] Ginther, O.J. and Williams, D. (1996) On-the-farm incidence and nature of equine dystocias. J. equine vet. Sci. 6, 159-164.
[2] Norton JL, Dallap BL, Johnston JK, Palmer JE, Sertich PL, Boston R, Wilkins PA. Retrospective study of dystocia in mares at a referral hospital. Equine Vet J. 2007 Jan;39(1):37-41.
[3] Byron CR, Embertson RM, Bernard WV, Hance SR, Bramlage LR, Hopper SA. Dystocia in a referral hospital setting: approach and results. Equine Vet J. 2003 Jan;35(1):82-5.
[4] Newcombe JR, Nout YS. Apparent effect of management on the hour of parturition in mares. Vet Rec. 1998 Feb 28;142(9):221-2.

参考動画:Horse giving birth (Arabian Horse Family)
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