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馬の文献:運動誘発性肺出血(Hinchcliff et al. 2005b)

「気管気管支内視鏡検査による馬の運動誘発性肺出血の評価」
Hinchcliff KW, Jackson MA, Brown JA, Dredge AF, O'Callaghan PA, McCaffrey JP, Morley PS, Slocombe RE, Clarke AF. Tracheobronchoscopic assessment of exercise-induced pulmonary hemorrhage in horses. Am J Vet Res. 2005; 66(4): 596-598.

この研究では、馬の運動誘発性肺出血(Exercise-induced pulmonary hemorrhage)に有用な診断法を検討するため、747頭のサラブレッド競走馬の850回のレース後に、気管気管支内視鏡検査(Tracheobronchoscopic assessment)の所見をビデオ撮影し、その映像を見た三人の馬獣医師が肺出血のグレード化を行い、カッパ統計解析(Kappa statistics)によって観察者間同意(Inter-observer agreement)が評価されました。

この研究では、以下のような四段階の点数化システムが用いられました。
グレード1:数個の小血塊、または二個以下の小血流(気管長軸の四分の一以下の幅の狭い血流)が、気管または気管分岐部から見える主要肺胞に認められる所見(Presence of 1 or more flecks of blood or ≤ 2 short [less than a quarter of the length of the trachea], narrow [less than 10% of the tracheal surface area] streams of blood in the trachea or mainstem bronchi visible from the tracheal bifurcation)。
グレード2:一個の大血流(気管長軸の半分以上)または二個以上の小血流が、気管周回の三分の一以下を覆っている所見(Presence of a long [more than half the length of the trachea] stream of blood or more than 2 short streams occupying less than a third of the tracheal circumference)。
グレード3:複数の明瞭な血流が、気管周回の三分の一以上を覆っているが、胸郭入口の血液貯留はない所見(Multiple distinct streams of blood covering more than a third of the tracheal circumference but without evidence of blood pooling at the thoracic inlet)。
グレード4:複数の癒着血流が気管内面の九割以上を覆って、胸郭入口に血液貯留が起きている所見(Multiple coalescing streams of blood covering more than 90% of the tracheal surface with pooling of blood at the thoracic inlet)。

この研究では、カッパ係数が0.20以下では観察者間同意が「悪い」(Poor)、0.20~0.40では「まずまず」(Fair)、0.41~0.60では「中程度」(Moderate)、0.61~0.80では「良い」(Good)、0.80以上では「非常に良い」(Excellent)という定義がなされました。その結果、今回の研究における内視鏡検査の点数化では、カッパ係数は0.75~0.80という非常に高い数値を示していました。また、三人の馬獣医師のグレードがまったく同じあった場合が68.7%に上り、三人のうち二人が同じグレードで、もう一人のグレードも1以内の範囲であった場合は99.4%に達していました。このため、馬の運動誘発性肺出血における内視鏡検査では、上述の点数化システムを用いることで、観察者間変動(Inter-observer variability)を少なく抑えられて、信頼性かつ統一性のある病態評価が可能になることが示唆されました。

一般的に、競走馬の運動誘発性肺出血においては、その発症が競走能力(Racing performance)に影響を与えるのか?、その発症および重篤度(Severity)に関与する危険因子(Risk factors)が存在するのか?、フロセマイド投与や鼻拡張バンド(所謂Nasal dilator strips)によって発症予防や重篤度減退の効果が期待できるのか?、という疑問が長年にわたって投げ掛けられており、様々な相反した研究結果(Conflicting results)が示されています。このため、このような疑問に正確に答えるためには、今回の研究で検証されたような信頼性のある点数化システムを用いることが重要である、という考察がなされています。

一般的に、馬の運動誘発性肺出血の評価に際しては、気管支肺胞洗浄液(Bronchoalveolar lavage fluid)における赤血球数(Red blood cell count)を調べる手法も有用ですが、この場合には、外科的侵襲(Surgical invasion)の大きい検査法であるため、実際の臨床症例への応用は制限される場合もあります。また、気管支肺胞洗浄では、より尾側の肺組織(More caudal lung tissue)からの検体採取であること、片方の肺の病態しか反映していないこと、赤血球数と肺出血の重篤度の相関は正確には解明されていないこと、等の理由から、内視鏡検査とは一線を画した検査法であると認識するべきなのかもしれません。

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