蹄骨の裏側の骨片での関節鏡
話題 - 2022年12月27日 (火)

関節鏡手術は、馬の無菌手術のなかで、最も頻繁に実施されるものの一つで、OCDや小片骨折の摘出の他にも、多様な関節疾患の治療に適応されています。ここでは、蹄骨の裏側(掌側または底側)に骨軟骨片を発生した四頭の跛行馬に対して、関節鏡手術を実施した知見を紹介します。
参考文献:
Lloyd KA, Smith MR, Whitton RC, Stent AW, Steel CM. Osteochondral fragmentation of the palmarolateral/plantarolateral aspect of the distal phalanx in four horses: A novel location. Equine Vet Edu. 2022;34(4):e163-168.
この研究の四症例では、年齢や跛行期間は多様でしたが、いずれも蹄関節包の膨満と、遠位肢の屈曲試験に陽性を示して、蹄関節麻酔された症例では跛行改善が確認されました。X線検査では、正面からのスカイライン像または外内方向に斜めのスカイライン像にて、最も信頼性が高く骨片を確認できました(Dorsal 65°proximal-palmaro/plantarodistal oblique or Dorsal 65°proximal-palmaro/plantarodistal lateral oblique)。
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この研究では、四頭のうち三頭に対して関節鏡手術が実施されましたが、そのうち二頭では、関節鏡による骨片へのアクセスは不可でした。残りの一頭は、蹄関節の異常な可動性があったため、骨片へのアクセスは可能でしたが、蹄関節の側副靭帯損傷の疑いが持たれました(MRI検査は不実施)。しかし、この骨片は不対靭帯と広範囲に固着していたため、骨片摘出は断念されましたが(遊離骨片は摘出された)、この症例は、その後に歩様の良好な改善を示して、競走馬として使役できたことが報告されています。あとの三頭については、正常歩様の回復が見られず予後不良となっていました。
このため、蹄骨の掌側/底側の骨軟骨片においては、関節鏡での摘出は困難であり、保存療法でも予後不良となる場合が多いことが示唆されました。馬の蹄関節では、関節鏡の掌側アプローチの術式も報告されていますが、骨片の位置を鑑みると、摘出および病巣掻把は難しいと考察されています。蹄骨の裏側には、骨軟骨症による骨片形成も起こり得ると言われていますが、今回の四症例では、不対靭帯の牽引による剥離骨折の可能性が高いと考えられました。
Photo courtesy of Equine Vet Edu. 2022;34(4):e163-168 (doi: 10.1111/eve.13456).
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