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馬の衝撃波治療での鎮痛作用

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体外衝撃波治療(Extracorporeal shock wave therapy)は、もともと結石などの硬い物質を破砕する目的で使用されてきましたが、近年、腱靭帯組織の除痛や組織修復の効果があると言われるようになり、馬の運動器疾患等に対しても適応されています[1-3]。

一方で、衝撃波治療を施した部位では、痛みを感じる神経線維を変性させたり、痛みの伝達物質を枯渇させることで、好ましくない鎮痛作用を及ぼしてしまうという懸念もあります。ここでは、衝撃波治療による馬の鎮痛作用を評価した知見を紹介します。この研究では、慢性前肢跛行を呈した九頭の馬に対して、衝撃波治療または局所麻酔を実施して、歩様解析装置にて鎮痛効果の定量的評価が行なわれました。

参考文献:
Dahlberg JA, McClure SR, Evans RB, Reinertson EL. Force platform evaluation of lameness severity following extracorporeal shock wave therapy in horses with unilateral forelimb lameness. J Am Vet Med Assoc. 2006 Jul 1;229(1):100-3.

結果としては、歩様解析における垂直地面反力は、衝撃波治療の2日後でも治療前より有意に増加しており、局所麻酔した状態の歩様と同程度となっていました(その以降、七日目までは、局所麻酔よりは有意に低値)。また、羊の実験モデルを用いた衝撃波治療の評価では、CGRP等の神経関連物質の免疫染色検査が試みられましたが、痛覚伝達を担う神経線維の性状には有意差は認められませんでした[4]。

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以上の結果から、馬の四肢に対する衝撃波治療では、少なくとも治療後の48時間のあいだは、局所麻酔を掛けた状態と同レベルの鎮痛作用が生じていることが示唆されました。その一方で、過去の文献(齧歯類を用いた実験モデル[5])で示されたような神経組織変性は確認されておらず、鎮痛作用の発現メカニズムは不明とされています。

このため、馬の運動器疾患に衝撃波治療が実施された際には、四肢の痛覚が麻痺している可能性があり、その状態で騎乗運動をさせることで、跛行の原因疾患を悪化させたり、蹉跌や転倒などの事故の危険が増すことも懸念されます。また、今後の研究では、鎮痛作用の持続期間を詳細に調査したり、跛行が改善する理由が、本当に組織修復の促進なのか、単なる痛覚減少の結果なのかを明らかにする必要があると言えそうです。

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関連記事:
・馬の衝撃波治療での創傷治癒向上
・馬の衝撃波治療とPRP治療の併用
・衝撃波療法への規定強化の動き

参考文献:
[1] Brown KE, Nickels FA, Caron JP, Mullineaux DR, Clayton HM. Investigation of the immediate analgesic effects of extracorporeal shock wave therapy for treatment of navicular disease in horses. Vet Surg. 2005 Nov-Dec;34(6):554-8.
[2] Imboden I, Waldern NM, Wiestner T, Lischer CJ, Ueltschi G, Weishaupt MA. Short term analgesic effect of extracorporeal shock wave therapy in horses with proximal palmar metacarpal/plantar metatarsal pain. Vet J. 2009 Jan;179(1):50-9.
[3] Frisbie DD, Kawcak CE, McIlwraith CW. Evaluation of the effect of extracorporeal shock wave treatment on experimentally induced osteoarthritis in middle carpal joints of horses. Am J Vet Res. 2009 Apr;70(4):449-54.
[4] Abed JM, McClure SR, Yaeger MJ, Evans RB. Immunohistochemical evaluation of substance P and calcitonin gene-related peptide in skin and periosteum after extracorporeal shock wave therapy and radial pressure wave therapy in sheep. Am J Vet Res. 2007 Mar;68(3):323-8.
[5] Ohtori S, Inoue G, Mannoji C, Saisu T, Takahashi K, Mitsuhashi S, Wada Y, Takahashi K, Yamagata M, Moriya H. Shock wave application to rat skin induces degeneration and reinnervation of sensory nerve fibres. Neurosci Lett. 2001 Nov 23;315(1-2):57-60.
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