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馬の衝撃波治療での創傷治癒向上

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体外衝撃波治療(Extracorporeal shock wave therapy)は、もともと結石などの硬い物質を破砕する目的で使用されてきましたが、近年、腱靭帯組織の除痛や組織修復の効果があると言われるようになり、馬の運動器疾患等に対しても適応されています[1-3]。

さらに、馬の皮膚の創傷部に衝撃波を当てることで、創傷治癒を促進できるという報告もあり[4,5]、そのメカニズムを検討した知見も示されています。下記の研究では、14頭の健常馬の頚部または前肢に実験的に皮膚損傷を作成し、そこに衝撃波を当てた後、局所組織内の成長因子の活性が測定されました。

参考文献:
Link KA, Koenig JB, Silveira A, Plattner BL, Lillie BN. Effect of unfocused extracorporeal shock wave therapy on growth factor gene expression in wounds and intact skin of horses. Am J Vet Res. 2013 Feb;74(2):324-32.

結果としては、衝撃波を当てた創傷部では、無処置と比較して、TGF-beta1(形質転換増殖因子ベータ1)の活性が有意に減少しており、また、衝撃波を当てた創傷と無処置の創傷のいずれにおいても、28日目にはIGF-1(インスリン様成長因子1)の活性が有意に増加していました(それ以前の時点と比較して)。なお、創傷を与えていない健常な皮膚に対しては、衝撃波治療による成長因子(FGF-7, TGF-β1, IGF-1, PDGF, VEGF等)の活性増加は認められませんでした。

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以上の結果から、衝撃波治療を創傷部位に実施した際には、TGF-beta1活性を減少させることで、過剰な肉芽形成を抑制する作用が働き、その後に創傷治癒を向上させたという仮説がなされています。この作用が生じる具体的なメカニズムは不明ですが、衝撃波処置によって内皮透過性が亢進して、サイトカインや他の炎症介在物質の輸送を促し、創傷箇所に過剰蓄積するのを防いだ可能性が指摘されています。

この研究では、血管新生を促進させる因子(VEGF等)の活性亢進は確認されませんでしたが、過去の文献[6]では、ラットの皮膚損傷への衝撃波処置によって、血管再生が促進されて、虚血性皮膚損傷を抑えられたという報告もあります。その理由としては、齧歯類の薄い皮膚のほうが、衝撃波による影響を受けやすかったことや、馬の皮膚はもともと生理的な血管形成反応が強いため(他の動物種より肉芽過形成が起き易い)[7]、衝撃波による効能が示されにくかったこと等が挙げられています。

これらの知見から、馬の皮膚損傷に対する衝撃波治療は、血管新生を増加して創傷治癒を早めるよりも、肉芽形成を制御する効能が主である可能性が指摘されています。このため、細菌汚染や炎症が少ない健常な皮膚損傷に対しては、衝撃波処置を適応することの根拠や、費用対効果が疑問視されるデータが示されたとも言え、今後の研究では、馬の皮膚損傷がどのような状態になれば、衝撃波治療の効能が期待されるかの判断基準を確立させる必要がありそうです。

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参考文献:
[1] Brown KE, Nickels FA, Caron JP, Mullineaux DR, Clayton HM. Investigation of the immediate analgesic effects of extracorporeal shock wave therapy for treatment of navicular disease in horses. Vet Surg. 2005 Nov-Dec;34(6):554-8.
[2] Imboden I, Waldern NM, Wiestner T, Lischer CJ, Ueltschi G, Weishaupt MA. Short term analgesic effect of extracorporeal shock wave therapy in horses with proximal palmar metacarpal/plantar metatarsal pain. Vet J. 2009 Jan;179(1):50-9.
[3] Frisbie DD, Kawcak CE, McIlwraith CW. Evaluation of the effect of extracorporeal shock wave treatment on experimentally induced osteoarthritis in middle carpal joints of horses. Am J Vet Res. 2009 Apr;70(4):449-54.
[4] Morgan DD, McClure S, Yaeger MJ, Schumacher J, Evans RB. Effects of extracorporeal shock wave therapy on wounds of the distal portion of the limbs in horses. J Am Vet Med Assoc. 2009 May 1;234(9):1154-61.
[5] Silveira A, Koenig JB, Arroyo LG, Trout D, Moens NM, LaMarre J, Brooks A. Effects of unfocused extracorporeal shock wave therapy on healing of wounds of the distal portion of the forelimb in horses. Am J Vet Res. 2010 Feb;71(2):229-34.
[6] Kamelger F, Oehlbauer M, Piza-Katzer H, Meirer R. Extracorporeal shock wave treatment in ischemic tissues: what is the appropriate number of shock wave impulses? J Reconstr Microsurg. 2010 Feb;26(2):117-21.
[7] Lepault E, Celeste C, Doré M, Martineau D, Theoret CL. Comparative study on microvascular occlusion and apoptosis in body and limb wounds in the horse. Wound Repair Regen. 2005 Sep-Oct;13(5):520-9.

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