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馬の腰萎での剖検と発症素因

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馬の腰萎では、原因疾患を生前に確定診断できない症例も多く、剖検によって病態を精査すると共に、発症素因を解明して可能な予防対策を取ることが必要となります。下記の研究では、米国のUCデービスの獣医大学病院において、2005~2017年にかけて、剖検が実施された2,861頭の症例馬(うち腰萎馬は316頭)の医療記録の回顧的調査、および、オッズ比(OR)の算出による発症素因の解析が行なわれました。

参考文献:
Hales EN, Aleman M, Marquardt SA, Katzman SA, Woolard KD, Miller AD, Finno CJ. Postmortem diagnoses of spinal ataxia in 316 horses in California. J Am Vet Med Assoc. 2021 Jun 15;258(12):1386-1393.

結果としては、2,861頭の剖検馬のうちの神経器疾患では、頚椎狭窄性脊髄症(2.7%)が最も多く、次いで、変性脊髄脳炎(1.3%)、神経器の外傷(0.9%)となっており、原因不明の腰萎(2.0%)もありました。症例全体を見た場合、腰萎馬はウォームブラッド種である確率が他品種の二倍以上も高く(OR=2.70)、アラブ種である確率が約半分(OR=0.53)であることが示されました。

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この研究での腰萎馬(316頭)を見た場合、五歳齢未満の馬では、五歳以上に比べて、頚椎狭窄性脊髄症を発症するリスクが三倍近く高い(OR=2.82)ことが示され、また、他疾患に比較して、変性脊髄脳炎を発症するリスクは六倍以上も高い(OR=6.17)ことが分かりました。さらに、サラブレッド種では、他品種と比較して、頚椎狭窄性脊髄症を発症する確率が二倍以上高く(OR=2.54)、また、アラブ種では、変性脊髄脳炎を発症する確率が三倍近くも高い(OR=2.95)ことも報告されています。さらに、サラブレッド種では、他品種と比較して、変性脊髄脳炎を発症する確率が約1/10(OR=0.11)であることも分かりました。

この研究では、頚椎狭窄性脊髄症の罹患馬のうち、タイプ1(頚椎不安定症)が47%で、タイプ2(頚椎静的狭窄症)が36%を占めていました(他は分類不明)。また、発症年齢は、タイプ1が平均5.4歳で、タイプ2が平均9.1歳となっており、前者が、成長期整形外科疾患(Developmental orthopedic disease)の一病態であることを反映したデータであると言えそうです。

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以上の結果から、馬の神経器に発症する疾患ごとに、好発する品種や年齢の傾向が示されており、生前診断を試みる際には、此処の症例のプロフィールに基づいて、鑑別診断の優先順位を判断する一助になると推測されています。一方、腰萎馬のうち、剖検でも原因が特定できなかった症例は17.4%に及んでいたことから、脳脊髄組織のMRI撮影が困難な馬にとって、神経器疾患を診断することの難しさを再確認させるデータが示されたと言えます。

この研究では、腰萎馬の原因疾患として、原虫性脊髄脳炎(EPM)の発症率は第九位となっており、過去の文献[1,2]において、腰萎馬の原因疾患で最も多いのがEPMであるという知見とは、大きく相反する結果が示されました。この要因としては、過去数十年の獣医学の進歩により、EPMの予防対策(オポッサム駆除等)が広く普及されて、有病率そのものが下がったことや、診断技術の進歩によってEPMの生前推定診断の信頼性が上がり、獣医大学病院への剖検依頼する必要性が下がったことが挙げられています。

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Photo courtesy of J Am Vet Med Assoc. 2021 Jun 15;258(12):1386-1393. (doi: 10.2460/javma.258.12.1386)

参考文献:
[1] Mayhew IG, deLahunta A, Whitlock RH, Krook L, Tasker JB. Spinal cord disease in the horse. Cornell Vet. 1978 Jan;68 Suppl 6:1-207.
[2] Nappert G, Vrins A, Breton L, Beauregard M. A retrospective study of nineteen ataxic horses. Can Vet J. 1989 Oct;30(10):802-6.

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