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エンデュランス競技の直後に起こる疝痛

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エンデュランスの競技馬では、競技を棄権する理由の一つとして疝痛が挙げられており、発症率も高いことが報告されています[1]。

ここでは、エンデュランスの競技馬における疝痛の傾向を調査した知見を紹介します。この研究では、米国のカリフォルニア州の二箇所の馬病院において、2000~2010年にかけて、エンデュランス競技のあとの48時間以内に疝痛を発症した36頭の馬における、医療記録の回顧的解析が行なわれました。

参考文献:
Fielding CL, Dechant JE. Colic in competing endurance horses presenting to referral centres: 36 cases. Equine Vet J. 2012 Jul;44(4):472-5.

この研究では、36頭のエンデュランス競技馬のうち、アラブ種が83%(30頭)と最も多く、その他に、アラブ混血馬も3頭含まれていました。これらの疝痛馬の生存率は97%で、死亡した1頭は、胃潰瘍から胃破裂を続発していました。また、1/3の症例(12/36頭)では、過去にエンデュランス競技棄権の病歴がありました。

この研究では、エンデュランス競技直後における疝痛症状として、腸蠕動低下(83%)、CRT延長(39%)、胃逆流液(36%)などが示され、直腸検査では、糞便硬化(39%)や腸管膨満(35%)が触知されました。また、腹部エコー検査では、小腸の液性膨満と蠕動低下が認められ(46%)、腹部X線検査では、腸管のガス性膨満(58%)が見られました。そして、腹水検査では、27%で漿液性状が認められたのみで、蛋白濃度や白血球数の増加は見られませんでした。

この研究では、エンデュランス競技直後における疝痛の原因疾患として、イレウス(25%)、結腸食滞(11%)、結腸変位(11%)、サルモネラ症(8%)、近位小腸炎(8%)などが含まれました。また、治療内容としては、補液療法(100%)、鎮静剤投与(55%)、バナミン投与(44%)などが実施されました。そして、開腹術が実施されたのは5頭(14%)のみで、このうち4頭は生存しました(残りの1頭は胃破裂で安楽殺)。他の疾患としては、細菌性肺炎(1頭)や脛骨粗面骨折(1頭)が含まれました。

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この研究では、疝痛に対する内科治療として、平均45リットルの補液が実施され、平均入院日数は1.5日でした(範囲0.5~27日)。また、消化器以外の疾患で長期入院を要した症例を除いてデータ解析したところ、入院期間の延長に関連している危険因子としては、最初の24時間における補液量、および、競技棄権の病歴が無いことが挙げられました。

以上の結果から、エンデュランス競技直後における疝痛では、イレウスや食滞などの非絞扼性の疾患が多く、内科的療法によって良好な予後が期待されることが示されました。また、脱水症状が重度であった個体(=最初の24時間での多量補液を要した)では、長期の入院を要する確率が高いことが示唆された一方で、エンデュランス競技後に、アグレッシブな補液を実施することで、腸管壁の浮腫を助長して、イレウス誘発や治癒遅延に繋がる可能性も指摘されています[2]。

この研究では、血液検査において、PCV値や総蛋白濃度、乳酸値、クレアチニン濃度の上昇などが見られた症例もいましたが、いずれも、予後や入院期間とは相関していませんでした。過去の文献では[3]、エンデュランス競技馬において、PCV値や総蛋白濃度が高値を示すことが多いものの、これらは疝痛発症とは関連しないという知見があります。このため、エンデュランス競技馬の疝痛では、脱水を示す検査所見のみで、疝痛の重篤度を推し測るのは適切ではない、という警鐘が鳴らされています。

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この研究では、エンデュランス競技馬の疝痛において、サルモネラ症の発症が多い(8%)という傾向が示され、この罹患率は、同病院での他の疝痛馬(<1%)よりも顕著に高くなっていました。この要因としては、エンデュランス競技馬は、スタート前に密集して飼養される場合があること、競技前に輸送ストレスを受けること、および、競技前に飼料内容が変更される場合が多いこと、などが挙げられています。

この研究では、過去に競技棄権の病歴がある馬ほど、入院期間が短くなる傾向が認められました。この理由については、明確には結論付けられていませんが、過去に競技を棄権した馬ほど、ライダーが馬のコンディションに気を配るようになり、脱水や電解質不均衡などが重度になる前に走行速度を抑えるなどの対策を取った結果、疝痛を起こしたとしても、軽度に留まったのではないか、という仮説が成されています。

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参考文献:
[1] Fielding CL, Magdesian KG, Rhodes DM, Meier CA, Higgins JC. Clinical and biochemical abnormalities in endurance horses eliminated from competition for medical complications and requiring emergency medical treatment: 30 cases (2005-2006). J Vet Emerg Crit Care (San Antonio). 2009 Oct;19(5):473-8.
[2] Shah SK, Uray KS, Stewart RH, Laine GA, Cox CS Jr. Resuscitation-induced intestinal edema and related dysfunction: state of the science. J Surg Res. 2011 Mar;166(1):120-30.
[3] Barton MH, Williamson L, Jacks S, Norton N. Body weight, hematologic findings, and serum and plasma biochemical findings of horses competing in a 48-, 83-, or 159-km endurance ride under similar terrain and weather conditions. Am J Vet Res. 2003 Jun;64(6):746-53.

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