馬の文献:炎症性気道疾患(Mazan et al. 2005)
文献 - 2023年01月09日 (月)

「レントゲン検査所見の点数化では炎症性気道疾患の診断価値が不足している」
Mazan MR, Vin R, Hoffman AM. Radiographic scoring lacks predictive value in inflammatory airway disease. Equine Vet J. 2005; 37(6): 541-545.
この研究では、馬の炎症性気道疾患(Inflammatory airway disease)に有用な診断法を検討するため、16頭の健常な対照馬(Control horses)、および、33頭の炎症性気道疾患の罹患馬における、胸部レントゲン検査(Thoracic radiography)での気管支&間質パターン進展(Extent of bronchial and interstitial pattern)の点数化(Scoring)、気管支肺胞洗浄(Bronchoalveolar lavage)による細胞学的検査(Cytologic examination)、および、肺機能検査(Lung function testing)が行われました。
結果としては、レントゲン所見のグレードに対して算出された級内相関係数(Intraclass correlation coefficient)は、0.51~0.74に過ぎず、観察者間信頼度(Inter-rater reliability)は中程度に留まった事が示されました(級内相関係数が0.9以上で、良好な観察者間信頼度と見なされる)。また、レントゲン所見のグレードは、対照馬と症例馬のあいだで有意差は認められず、気管支肺胞洗浄の細胞学的検査、ヒスタミン吸入試験(Histamine bronchoprovocation)、努力性振動的肺機能検査(Lung function testing using the forced oscillatory technique)の結果とも、有意な相関は示していませんでした。
このため、炎症性気道疾患が疑われる馬における胸部レントゲン検査は、有用性の低い診断手法(Low-yield diagnostic modality)である事が示唆されました。そして、広範囲に及ぶ感染性疾患(Extensive infectious disease)が存在する場合を除き、胸部レントゲン検査によって診断能の向上は期待できない、という結論付けがなされています。この理由としては、大動物における胸部レントゲン撮影は、ブレが大きくなって解像度が低いことや(長時間のX線照射を要するため)、もともと気管支炎(Bronchiolitis)はレントゲン上では見分けにくいこと、単純な階級分け(Simple classification)に基づく点数化システムの低感度性、などが挙げられています。
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