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腹水検査での馬の肝疾患の診断

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腹水検査は、疝痛などの馬の腸管疾患での診断法の一つとして実施されており、罹患臓器のすぐ傍にある体液の性状を評価できる点で、多様な腹腔内病態の有無や重篤度を診断する一助になると言われています。

ここでは、成馬の肝疾患における腹水検査の所見と、胃腸疾患との鑑別能について調査した知見を紹介します。この研究では、スペインのバルセロナ大学の獣医病院において、2010~2014年にかけて、疝痛または肝疾患の疑いで診察を受けた108頭における、腹水検査所見と医療記録の回顧的解析、および、11頭の健常馬との比較が行なわれました。

参考文献:
Rodriguez-Pozo ML, Armengou L, Viu J, Ríos J, Jose-Cunilleras E. Peritoneal bile acids concentration in adult horses with hepatic and gastrointestinal disorders. Equine Vet J. 2022 Sep;54(5):914-921.

結果としては、108頭の症例馬のうち、肝疾患の罹患馬は13頭、胃腸の閉塞性疾患が48頭、胃腸の虚血疾患が47頭となっており、腹水中の胆汁酸の濃度を見ると、健常馬群(1.0μmol/L)や胃腸閉塞群(1.2μmol/L)に比較して、肝疾患群(6.8μmol/L)では有意に高値を示していました。一方、胃腸虚血群(3.3μmol/L)においても、健常馬群や胃腸閉塞群よりも有意に高値を示していました。この際、腹水中の胆汁酸濃度での2.28μmol/Lをカットオフ値とした場合には、肝疾患を診断する感度は69%、胃腸虚血を診断する感度は64%となっており、健常馬や胃腸閉塞を見分ける特異度は85%でした。

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この研究では、108頭の症例馬のうち、生存して退院を果たした馬は68頭で、退院前に安楽殺となった馬は40頭でしたが、腹水中の胆汁酸の濃度を比較すると、生存馬(1.3μmol/L)よりも、非生存馬(4.1μmol/L)において有意に高値を示していました。この際、上記と同様に、腹水中の胆汁酸濃度での2.28μmol/Lをカットオフ値とすると、非生存馬を鑑別する感度は68%であり、生存馬を見分ける特異度は72%でした。

この研究では、血漿中の胆汁酸の濃度を見たところ、肝疾患群と胃腸虚血群で高値を示していましたが(他の二群と比較して)、胃腸虚血群と比べると、肝疾患群のほうがやや高い平均値を示しており、また、顕著な高濃度(20μmol/L)を示した個体の割合は、肝疾患群では38%で、胃腸虚血群では4%となっていました。そして、この施設での正常範囲と比べると、腹水中と血漿中の胆汁酸濃度が、両方とも正常範囲より高い個体の割合は、肝疾患群では73%で、胃腸虚血群では61%となっていました(上図の緑枠が正常範囲)。

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以上の結果から、腹水中の胆汁酸濃度を測定することは、肝疾患を鑑別するのに有用である可能性が示唆されましたが、診断感度は七割以下に留まっており、この検査値のみでの推定診断は難しいと考えられました。今後の研究では、肝生検による肝臓機能の損失度合いとの相関を評価して、どの程度の重篤な肝疾患を起こしたときに、腹水中の胆汁酸濃度に変化をきたすかを精査する必要があると考察されています。

この研究では、肝疾患の他にも、胃腸の虚血性疾患においても、腹水中の胆汁酸濃度が上昇する傾向が認められ、この要因としては、絞扼性の胃腸疾患において肝臓への血液供給が減少して肝損傷を続発したこと、結腸変位などによる十二指腸靭帯の緊張が起こり、胆汁逆流を生じたこと、および、虚血再灌流に起因して遊離したフリーラジカルが肝組織の障害を引き起こしたこと、などが挙げられています。このため、この両群を鑑別する際には、疼痛症状の強さや血中乳酸濃度、直腸検査・エコー検査の異常所見などから、虚血性の胃腸疾患を除外するか、肝酵素等の他の血液検査所見を鑑みることが提唱されています。

Photo courtesy of Equine Vet J. 2022 Sep;54(5):914-921. (doi: 10.1111/evj.13538.)

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このエントリーのタグ: 疝痛 検査

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