馬のサク癖では空気を飲んでいない?
話題 - 2023年01月14日 (土)

サク癖は、馬用語で「グイッポ」とも呼ばれ、固定された物体を前歯で咥えて、それを支点にして頭頚部を屈曲させながら空気を飲み込むような動作を指します。
ここでは、馬のサク癖における「空気を飲み込む」という動作の真偽を調査した知見を紹介します。この研究では、サク癖行動をしたいる馬の頭頚部を、X線透視装置および内視鏡で撮影することで、咽頭から食道近位部における空気の移動状況が解析されました。
参考文献:
McGreevy PD, Richardson JD, Nicol CJ, Lane JG. Radiographic and endoscopic study of horses performing an oral based stereotypy. Equine Vet J. 1995 Mar;27(2):92-5.
結果としては、透視装置の側方撮影像によって、馬の嚥下動作をリアルタイムに描出できることが示されましたが、サク癖の所作の最中には、空気の嚥下は起きていないことが分かり、食道から胃へと空気が入っていく所見も認められませんでした。具体的には、グイッポの音が出るタイミングに合わせて、一過性の食道近位部の拡張が起こり、尾側へと吸引された少量の空気も、すぐに咽頭部へと押し戻されている様子が確認されました。

この研究では、頚部の舌骨下筋が収縮することで、食道周囲組織に圧力勾配を作って、咽頭から食道内への空気の吸引を引き起こすことが判明しており、その後に、食道の分節運動は生じていないことから、サク癖が「空気を飲み込む」という行動であることは否定されています。このため、サク癖の英語名である「Wind-sucking」も再定義されるべきだと提唱されています。
Photo courtesy of Equine Vet J. 1995 Mar;27(2):92-5. (doi: 10.1111/j.2042-3306.1995.tb03042.x.)
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