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馬の文献:炎症性気道疾患(Richard et al. 2009)

「無症候性の炎症性気道疾患がインパルス・オシロメトリー評価された馬の呼吸器機能に与える影響」
Richard EA, Fortier GD, Denoix JM, Art T, Lekeux PM, Van Erck E. Influence of subclinical inflammatory airway disease on equine respiratory function evaluated by impulse oscillometry. Equine Vet J. 2009; 41(4): 384-389.

この研究では、馬の炎症性気道疾患(Inflammatory airway disease)の有用な診断法を検討するため、プアパフォーマンスのため来院した34頭のスタンダードブレッド競走馬における、インパルス・オシロメトリー(Impulse oscillometry)による呼吸器機能(Respiratory function)の評価、および、気管支肺胞洗浄液(Bronchoalveolar lavage fluid)の細胞学的検査(Cytologic examination)が行われました。

結果としては、34頭の患馬のうち、気管支肺胞洗浄液の検査結果から、19頭が炎症性気道疾患の罹患馬、15頭が対照馬(Control horses)に分類され、症例馬のほうが対照馬に比べて、インパルス・オシロメトリー検査での呼吸器抵抗(Respiratory resistance)および呼吸器リアクタンス(Respiratory reactance)の測定値が、有意に悪化している事が示されました。このため、競走馬におけるインパルス・オシロメトリー検査によって、顕著な呼吸器症状(Respiratory clinical signs)を呈していない無症候性炎症性気道疾患(Subclinical inflammatory airway disease)に対しても、高感度(High sensitivity)での診断ができる可能性が示唆されました。また、他の文献では、安静呼吸状態(Eupnoeic conditions)における肺機能検査においても、食道バルーン法では認められないほどの僅かな変化を、インパルス・オシロメトリー法によって探知できた事が報告されています(Pirrone et al. Vet J. 2007;173:144)。

この研究で試験されたインパルス・オシロメトリー法は、強制振動負荷原理(Principle of forced oscillation technique)を応用した非侵襲性呼吸器機能検査法(Non-invasive respiratory function testing)で、迅速かつ簡易に、呼吸器インピーダンス総量(Total respiratory impedance)、気道抵抗(Airway resistance)、肺の弾性容量(Elastic capacity of the lungs)、換気均一性(Homogeneity of ventilation)などを評価する事ができます(Peslin and Duvivier. J Appl Physiol. 1998;84:553)。そして、馬に対する臨床応用においては、インパルス・オシロメトリー法のほうが、食道バルーン法(Esophageal balloon technique)よりも、高感度に呼吸器機能を評価できる事が知られています(Van Erck et al. EVJ. 2006;38:52)。

この研究では、炎症性気道疾患の罹患馬において、呼吸器抵抗&リアクタンスの有意な悪化が認められ、これは、息労(Heaves)(=回帰性気道閉塞:Recurrent airway obstruction)の罹患馬におけるインパルス・オシロメトリー検査によって確認された、下部気道閉塞(Lower airway obstruction)の所見とも合致していました(Young et al. J Appl Physiol. 1997;82:983)。一方、今回の研究では、炎症性気道疾患が吸気&呼気インピーダンス指標(Inspiratory and expiratory impedance parameters)の両方に影響することが示されましたが、これは単に肺換気の領域的不均一性(Regional heterogeneity in pulmonary ventilation)に起因していた可能性もあるため、このような変化の有意性(Significance)については、更なる検証を要すると考察されています。

この研究では、気管支肺胞洗浄液の好酸球数および肥満細胞数(Eosinophil and mast cell counts)と、インパルス・オシロメトリー法による検査値とのあいだに、有意な相関が認められました。一方で、気管支肺胞洗浄液の好中球数(Neutrophil count)は、呼吸器機能測定値とは相関していませんでした。このため、肺機能に影響を及ぼす下部気道閉塞と、気管浸出液(Tracheal mucus)や咳嗽(Cough)などの炎症性症状の発現は、それぞれ異なった細胞学的機序で誘導されている可能性があると考察されています(好中球は炎症のみを誘導し、好酸球&肥満細胞は気道閉塞のみを誘導する?)。

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