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馬の食道粘膜反転術

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一般的に、食道(Esophagus)という組織に対する手術では、重篤な雑菌混入(Severe bacterial contamination)が起きやすく、複数の筋層の機能回復を要するという特徴から、外科的手技の難易度が高いことが知られています。以下は、食道粘膜反転術(Esophageal mucosal inversion)についての概要解説です。

馬における食道粘膜反転術は、圧出性食道憩室(Pulsion esophageal diverticula)の外科的整復のために実施されます。頚部腹側切開創からアプローチが行われ、周囲軟部組織を慎重に切開&剥離して筋層の裂離病変部位(Muscular defect lesion)に到達します(下図A)。羅患部位の筋層端を切除した後(下図B)、断端同士を単純結節縫合(Simple interrupted pattern)して筋層を再構築(Muscular layer reconstruction)させて、憩室形成を呈した粘膜層の反転を行います(下図C)。

食道粘膜反転術に際しては、必ず術中内視鏡検査(Intra-operative endoscopy)を行って、内腔の狭窄度合いをモニタリングすることが重要です。術後には、4~6週間にわたって細かく刻んだ青草&ふやかしたペレットなどの柔らかい飼料を給餌することが推奨されています。

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突出した粘膜層の伸展が著しく、反転によって食道腔の狭窄化が認められる場合には、憩室切除術(Diverticulectomy)によって粘膜層を取り除き、食道吻合術(Esophageal anastomosis)と筋層縫合を実施します。この場合には、術創の治癒促進のため、羅患部位より遠位側に設けた別の切開創から、食道造瘻術(Esophagostomy)を施して胃カテーテルを留置し、その管から給餌を行うことが推奨されています。

Photo courtesy of Equine Surgery, 3rd edition. Eds: Auer JA and Stick JA, 2006, WB Sounders (ISBN 1-4160-0123-9).
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