馬の病気:飛節脱臼
馬の運動器病 - 2013年09月05日 (木)

飛節脱臼(Tarsal luxation)について。
飛節に起こる脱臼(Luxation)および亜脱臼(Subluxation)は、主に転倒時や蹄を滑らせた場合など、後肢を捻る動作(Wrenching/Twisting action)によって発症すると考えられていますが、馬房壁を蹴ったり、他の馬からの蹴傷などから起こる病態も報告されています。
飛節の脱臼や亜脱臼の症状としては、不負重性跛行(Non-weight-bearing lameness)と飛節変形症(Tarsal deformity)を呈し、脱臼部より遠位肢が異常な可動性を示すことが触診されます。足根下腿関節(Tarsocrural joint)の脱臼では、脛骨遠位端(Distal end of tibia)の頭側変位(Cranial displacement)が認められる事もあります。飛節の脱臼や亜脱臼が疑われる症例では、レントゲン検査(Radiography)で正確な脱臼部位の判定と、足根骨骨折(Tarsal bone fracture)の併発を確認することが必要で、また、超音波検査(Ultrasonography)によって腱や靭帯組織の損傷を確かめることも重要です。
足根下腿関節の脱臼や亜脱臼の治療では、脱臼部を正常位置に整復した後、全肢ギプス固定術(Full-limb casting)が最低六週間にわたって施され、ギプスの上端をできるだけ膝関節に近い位置で終了させることで、より効果的に飛節の不動化(Immobilization)が達成できる事が示唆されています。距踵骨関節(Talocalcaneal joint)、距踵骨中心第四足根骨関節(Talocalcaneal-centroquatral joint)、足根中足骨関節(Tarso-metatarsal joint)などの脱臼を起こした症例では、ギプス固定術に併行して、これらの関節の螺子固定術(Lag-screw fixation)またはプレート固定術が応用される場合もあり、固定前に関節軟骨除去(Articular cartilage removal)を行うことで、速やかな関節癒合(Joint fusion)を誘導する術式が提唱されています。
飛節の脱臼や亜脱臼の予後は中程度~不良で、側副靭帯(Collateral ligament)や関節包(Joint capsule)などの周囲支持組織の損傷度によっては、脱臼部の完全な不動化が難しく、予後は悪いことが示唆されています。特に、足根下腿関節の脱臼や亜脱臼では、関節固定術を応用できないため、術後に変性関節疾患(Degenerative joint disease)の合併症を起こす危険が高いことが知られています。
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