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馬着の金具には注意しよう

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馬着は、気温の変動や害虫、物理的な侵襲などから、愛馬の体を守ってくれますが、それが正しく機能するよう、常に注意を払うことも大切です。ここでは、馬着を小まめにチェックすることの重要性を解説した知見を紹介します。

参考資料:
Stephanie L. Church, Editorial Director. Be Sure To Check (and Fix) This Common Horse Blanket Issue. Commentary, Farm and Barn, Horse Care, Seasonal Care, Tack, Equipment & Products, Welfare and Industry: Jan4, 2023.

この記事の筆者は、生まれてからずっと馬を管理してきて、馬の健康管理について執筆することに人生の半分を費やしてきたそうですが、それでも、時々間違いを起こしてしまい、そこから学ばなければならない、と述べています。自分自身は厳格な性格だと思っているそうですので、失敗談をするのは辛い面もありますが、馬が怪我をするのを避けるためにも、ホースマンの皆様が同じ轍を踏まないことを願って、筆者が行なった失敗について共有してくれています。

数年前のある早秋の朝、外乗に出掛ける準備をするため、当時担当していた牧場に車で向かいました。筆者が牧場に到着したとき、周囲はまだ暗く、厩舎の扉を開けると、頭上の明かりに慣れるために、目をこらして瞬きをする馬たちの声が聞こえました。

通常は、筆者が厩舎に入ると、数頭の馬たちが、通路に顔を突き出しているのが見えます。厩舎内の馬房の幾つかには、観音開きの扉もありましたが、他の馬房には格子戸のあるスライドドアが使われていました。筆者の愛馬であるハッピー号は、厩舎で何が起こっているかを見るのが好きでしたし、おやつの人参を楽しみにして、既に格子戸の前に立っていました。

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しかし、筆者が馬房に近づくにつれ、何かが少し違うことに気付きました。ハッピー号の姿勢が普通ではなく、どこか拘束されているような様子で、ディズニーアニメの馬のように、頭と首をアーチ状に持ち上げて駐立していました。

筆者は、一瞬で何が起こったかを理解しました。前夜は、ハッピー号に新しいシート馬着を着せたのですが、その前面の留め具を着け替えるのを忘れてしまったのです(当時は毛刈りをしていたため、気温が下がるとシート馬着や厚馬着が必要でした)。そのシート馬着は、よくある市販タイプでしたが、クイッククリップの開口部が、馬の胸前の方向ではなく、外側を向いていました。スプリング式のクリップは、シート馬着の金属リングに、早く留めることができるように設計されており、その通りに正確に機能していました。しかし、ハッピー号が格子戸に寄りかかった時に、運悪く、金具が金属格子に引っ掛かってしまったのです。

筆者は、出版業界で働いているので、つい写真を撮りたくなる事がありますが、その時ばかりは、ハッピー号のことが心配でたまらず、すぐに救出作業に取り掛かりました。筆者は、落ち着いた声でハッピー号に話しかけ、おやつを与えながら、金具を外そうとしました。幸いにもハッピー号は、不自由な姿勢でも我慢強く待ってくれていたので、数秒で自由にしてあげる事ができました。

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筆者と愛馬は、一緒になって深い溜め息をついてから、馬体と厩舎を調べました。幸いにも、ハッピー号には外傷や打撲はありませんでした(厩舎肢巻きを着用していたので、それが役に立ったかもしれないとの事でした)。しかし、馬房には、ハッピー号が格闘していた痕跡が見られました。シート馬着の前面にあった金具の一つは、馬着から引き剥がされ、床に敷いてあった藁は乱れていました。

ただ、水桶は殆ど空になっていたので、金具が引っ掛かってから数時間しか経っていない可能性がありました。にも関わらず、ハッピー号の後ろには、たくさんのボロが落ちており、非常に不安だったのだと容易に想像がつきました(ちょうど、怖がりな馬が、短時間の輸送であっても、馬運車のなかで、お腹が空になるほどボロをしてしまうように)。

兎にも角にも、筆者はトレーナーが見ている中で、ハッピー号を曳いて走らせ、ハッピー号の体に問題が無いかを確認しました。筆者は、愛馬が大怪我をしなかったことに感謝しながらも、トレーナーはストラップから留め金を外して、それを反対向きに回転させました。その日の午後、筆者は、何事も無かったように、外乗をエンジョイすることが出来たそうです。



筆者はその後、この事件をSNSで共有しましたが、今回のようなリスクに気付いていない友人もいました。このため、筆者は、馬着の前面にあるクリップを調べて、金具が他の物に引っ掛かることがないように工夫しよう、と呼び掛けています。具体的には、金具が反対の方向を向いている場合は、胸部ストラップから留め具を外して、それらを馬体の方向に向けて裏返すよう提案しています。また、馬着の構造上それが難しい場合には、業務用ミシン等を持っている方に手伝ってもらって、クリップの開口部分が馬の胸前に向くように、ストラップを外して縫い直すことを推奨しています。

幸運にも、この記事の事象では、筆者の愛馬は無傷で済みました。しかし、もっと臆病で驚きやすい馬の場合には、馬着が扉に拘束されてしまい、パニックになって暴れることで、肢を骨折するなど、命に関わる怪我に繋がる危険もゼロだとは言えません。また、金具が引っ掛かる以外にも、馬着自体がズレてしまい、馬が怪我をするケースも考えられます。

馬着の金具に起因する事故は、ホースマンが馬着を着せるときに、一般的に留意する点なのだと思いますが、ハッピー号のような事故を再発させないよう、あらためて、全ての馬着の状態をチェックしてみても良いのかもしれません。

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