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乾草を浸して食べる馬

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ホースマンの中には、愛馬が乾草を食べるときに、水桶に浸してから摂食することに悩んでいる方もいるかもしれません。夏場には、乾草の細片が水桶のなかで腐敗して、ハエが舞ってしまうこともあります。こんな時に、どう対処すれば良いのかを解説した知見を紹介します。

参考資料:
Clair Thunes, PhD. Why Does My Horse Dunk His Hay? Find out why your horse might benefit from a “dunk bucket.” The Horse, Behavior, Commentary, Hay, Horse Care, Horse Nutrition Commentary Series, Nutrition, Nutrition Basics, Water & Electrolytes: Jan 6, 2023.

乾草を水桶に浸してから食べるという行動は、一部の馬が身につける習慣であり、その理由は明確には分かっていません。まず考えられる原因は、歯に痛みを持っていたり、ホコリっぽい飼料による鼻粘膜への刺激などの問題かもしれません。また、飼料の嗜好性を挙げている可能性もあります。確かに、水に浸した乾草は少し柔らかく、ホコリっぽくないため、馬がそれを好むのかもしれません。

一方で、胃潰瘍を起こしている馬では、乾いた飼料が胃粘膜を刺激する可能性があるため、飼料を水桶に浸してから食べているのだと考える人もいます。もし、馬が急に飼料を水桶に浸すようになったケースでは、原因となる潜在的な病気を除外するために、獣医師に相談してみることが推奨されます。場合によっては、歯科疾患や呼吸器病、胃潰瘍の治療を施すことで、乾草を水桶に浸すという行動が緩和されることもあります。

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もし、馬が健康であり、乾草を浸して食べる行動が、暫くのあいだ続いているのであれば、それは馬自身の好みになっている可能性があります。水桶に乾草を浸すことの利点は、乾燥した飼料を食べるよりも、摂食中により多くの水分を摂取できることです。ただ、乾燥した飼料を摂取した場合でも、食後に飲水量が増加するため、全体的に水分摂取量は同じくらいになるのかもしれません。

一方で、暑い天気の日には、乾草の入った水桶はスープ状になり、腐敗してしまうことがあります。これによって、馬の食欲が減退するかもしれませんし、水桶から自発的に飲水する量が減少する可能性があります。その結果、脱水症状を引き起こすのであれば、憂慮すべきことになります。また、腐敗した飼料を摂取することで、消化器系の問題や腸閉塞を引き起こす危険性もあるので、それを予防するため、乾草が入ってしまった水桶は、頻繁に清掃することが重要になってきます。

乾草を浸して食べる馬を飼養するときには、水桶を二つ設置することが推奨されます。一つ目の水桶は、馬が乾草を浸し易いように、敢えて飼い桶の隣りに設置して、二つ目の水桶は、馬房の反対側など、やや遠くに設置しておくことで、より清潔に保てるようにします。飼い桶の近くにあるほうの水桶が小さいと、乾草で満たされた時に、より腐敗しやすくなり、蝿を引きつけてしまいます。その反面、飼い桶の近くにある水桶が大きければ大きいほど、頻繁に内容物を捨てて掃除するのに手間が掛かってしまいます。

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ですので、どのようなサイズの水桶を設置するかは、ジレンマがあるかもしれません。また、水桶を掃除するときには、ふるいを用意しておくと、乾草片を選り分けるのが簡易になります。水に漬けられた乾草は、腐敗が進んでいるリスクがありますので、馬が食べられるように残すのではなく、速やかに処分するのが無難です。

乾草を浸して食べる馬は、その飼養に際して、水桶を清潔に保つための追加の作業を要することにはなりますが、馬自身は、その食べ方を好んでいるように見えます。ですので、そんな馬の管理者は、馬に清潔な飲料水を提供し、蝿の問題を最小限に抑えることこそが、馬の快適な生活に役立つのだと考えて、そのようなケアを地味に行なってあげるのが良いのかもしれません。

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このエントリーのタグ: 飼養管理 行動学 厩舎管理

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