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馬の文献:離断性骨軟骨炎(Verwilghen et al. 2013)

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「成長期整形疾患は温血馬の障害飛越能力に影響するか?」
Verwilghen DR, Janssens S, Busoni V, Pille F, Johnston C, Serteyn D. Do developmental orthopaedic disorders influence future jumping performances in Warmblood stallions? Equine Vet J. 2013 Sep;45(5):578-81.

この症例論文では、離断性骨軟骨炎(OCD)や骨軟骨症(OC)などの、馬の成長期整形疾患(DOD)の長期的な予後を評価するため、2001~2008年にかけて、X線検査でDODの診断が下された215頭の温血馬(牡馬)における、長期的な障害飛越競技の成績の調査、および、対照馬(137頭)との比較が行なわれました。

結果としては、DOD罹患馬と対照馬のあいだで、障害飛越競技の成績には有意差が無かった(競技への参加回数および競技成績スコアのいずれも)ことが分かりました。また、下腿足根関節にDOD病変を呈した症例を見ても、対照馬とのあいだに有意差は認められませんでした。一方で、OCD骨片が管骨の背側矢状稜に生じた症例、および、OC病変が大腿骨外側滑車に生じた症例では、障害飛越競技の成績が有意に低かったというデータが示されました(競技への参加回数および競技成績スコアの両方とも)。

このため、温血馬のDODにおいては、病変のタイプや発生箇所によって、長期的な障害飛越能力への悪影響の度合いが異なることが示唆されました。具体的には、球節の前面や後膝の外側部が罹患した場合には、予後が芳しくない可能性があるため、若齢馬の跛行検査においては、これらの部位を画像診断で精査することが重要であることが再確認されました。ただ、大腿膝蓋関節のOC病変を発症した馬のうち、片方の後膝のみ罹患した馬と、左右両方の後膝に罹患した馬を比べると、障害飛越競技の成績に有意差はありませんでした。

この研究の限界点としては、各症例がDODと診断された後、どのような治療が実施されたかに関しては、調査の対象とされていないことが挙げられています。このため、関節鏡手術による骨片摘出や、病巣掻把の有無や度合いは不明であり、外科的療法と保存療法による予後の差異は検証されていませんでした。ただ、DODの有病率は、類似の過去文献と同等であるため、当該地域での温血馬群におけるDOD発症状況を反映しているという考察はなされています。

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