馬の文献:離断性骨軟骨炎(Clarke et al. 2015)
文献 - 2023年06月09日 (金)

「若齢サラブレッドの膝関節や飛節の離断性骨軟骨炎の治療」
Clarke KL, Reardon R, Russell T. Treatment of osteochondrosis dissecans in the stifle and tarsus of juvenile thoroughbred horses. Vet Surg. 2015 Apr;44(3):297-303.
この症例論文では、馬の離断性骨軟骨炎(OCD)の外科的治療の効能を評価するため、2002~2008年にかけて、豪州の馬病院において、膝関節(37頭)または飛節(35頭)にOCD病変を発症して、X線検査と関節鏡手術が実施された若齢サラブレッドにおける医療記録の回顧的解析、および、その後の競走成績の調査が行なわれました。
結果としては、膝関節OCDの罹患馬では、対照馬と比較して、総獲得賞金、総出走数、総勝利数が有意に低いことが分かりました。一方、飛節OCDの罹患馬では、対照馬に比べて、総出走数が有意に低かったものの、総獲得賞金や総勝利数は同程度であったことが示されました。このため、若齢のサラブレッド競走馬においては、飛節よりも膝関節のOCDのほうが、将来的な競走能力への悪影響が大きく、レース成績も低くなることが示唆されました。
この研究では、競走成績に影響する因子を多因子回帰解析で評価したところ、関節鏡手術の時点での年齢が若いほど、総獲得賞金、三歳までの出走数、総勝利数が有意に優れていることが分かりました。また、OCD病変の重篤度が軽度な場合は、中程度~重度であった場合に比較して、二歳までの出走数、および、三歳までの勝利数が有意に多かったことも示されました。さらに、関節鏡の執刀医の経験が多いほど、総獲得賞金、総出走数、三歳までの勝利数も有意に優れていました。
以上の結果から、若齢のサラブレッド競走馬では、飛節よりも膝関節のOCDにおいて、関節鏡手術をより早いタイミングで積極的に適応することで、将来的な競走成績を向上できることが示唆されました。また、OCD病変の重篤度と競走能力にも負の相関が認められたことから、関節鏡による関節内組織の内診で病巣を正確に評価することで、その後の競走能力への悪影響を、より正確に予測できると考えられました。
この研究では、術前の跛行グレードが3以上の場合には、無跛行であった場合に比べて、二歳までの出走数が有意に少ないことも示されています。一方で、関節膨満の重篤度スコアは、術後に競走成績とは、有意には相関していませんでした。このため、グレード3跛行を呈するような進行したOCDでは、関節軟骨の変性など、予後を悪化させる病態が存在している可能性があると推測されましたが、関節膨満を呈する滑膜炎の場合には、術後の競走能力への影響は低い傾向が認められました。
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