馬に給餌するオイルの種類
馬の飼養管理 - 2023年06月21日 (水)

ホースマンの中には、毛艶や肉付きの向上を目的として、飼料へのオイル添加を試みる方もいらっしゃるかもしれません。ここでは、馬に給餌するオイルについて解説した知見を紹介します。
参考資料:
Clair Thunes, PhD. Choosing the Right Type of Oil for Your Horse. The Horse, Article, Commentary, Equine Nutrition FAQs, Feeding Fats, Nutrition, Nutrition Basics: May 29th, 2023.
一般的に、馬にオイルを給餌することで、脂肪酸が摂取されて、被毛が皮脂で適切に被包されて、毛艶が良くなると言われています。また、脂質は、同重量の炭水化物に比較して、カロリー量が二倍も高いため、飼料の容積を大幅に増やすことなく、摂取カロリー量を増加させて、肉付きが改善することが知られています。そして、炭水化物を増やして太らせようとすると、馬の気性が荒く激しくなり易いと言われていますが、オイル給餌では、そのような性格や行動の変化が少ない、という経験則もあります。
このように、カロリーや脂肪酸の摂取量を増やすという目的においては、給餌するオイルの種類による差異は少ないと言われており、コーン油、カノーラ油、ベジタブル油などが用いられています。一方、オイルに含まれる他の成分に関しては、オイルの種類により違いがあるため、それにより得られる効能を考慮することが提案されています。

馬が普段の飼料から摂取する脂肪酸には、オメガ6とオメガ3という二種類があり、通常のエサでは、後者のほうが多いと言われています。これらの高度不飽和脂肪酸は、細胞膜構造の恒常性や炎症反応、および、他の多様な生理学的反応に寄与していることが知られています。
通常、馬の飼料に多く含まれるオメガ3脂肪酸は、熱安定性が低いため、生草を干して乾草にする際に、その多くが失われてしまいます。一方で、米ヌカやベジタブル油などには、オメガ6脂肪酸が高濃度に含まれており、これらを給餌することで、オメガ3脂肪酸よりも摂取される割合が高くなると言われています。
オメガ3および6のいずれの脂肪酸も、必須脂肪酸と呼ばれ、馬の体内で合成できないものである事が知られています。馬の飼養形態として、良質な牧草地への放牧が出来ない場合には、オメガ3脂肪酸が不足しやすいと言われています。このため、そのようなケースでは、毛艶や肉付き向上、および、炎症反応を制御するため、オメガ3脂肪酸を飼料添加することが推奨されています。

馬に給餌されるオイルのうち、コーン油は安価ではありますが、オメガ3脂肪酸は殆ど含まれていないため、前述の目的としては、あまり推奨されません。また、カノーラ油や大豆油には、高濃度のオメガ6脂肪酸のほか、ある程度のオメガ3脂肪酸も含まれており、痩せ易い体質の馬に対して給餌されています。さらに、亜麻仁油やカメリナ油には、オメガ3および6の両方の脂肪酸が、高濃度に含有されていることから、毛艶や肉付きを改善するために給餌するオイルとして推奨されています。
これらのオイルの添加量は、毛艶向上の目的としては、一日あたり約60mL(2オンス)で十分ですが、削痩改善のためのカロリー摂取量増加を図るためには、それよりも多量の飼料添加を要すると言われています。この場合、エサの嗜好性が落ちることも多いため、オイル以外のカロリー源も検討する必要があります。その他のオイルの選択肢としては、ステアリドン酸を含むアヒフラワー油、および、ガンマリノレン酸を含むヘンプ油などが添加されることもあります。
以上のようなオイルを飼料添加することで、毛艶や肉付きの向上が見られることが一般的です。また、オメガ3脂肪酸の含有量が高いオイルを選択することで、全身的な炎症反応機能を制御するという効能が得られ、関節組織の健康増進、呼吸器機能の改善、免疫防御能の強化などの好影響が期待されると提唱されています。

Copyright (C) nairegift.com/freephoto/, freedigitalphotos.net/, pakutaso.com/, picjumbo.com/, pexels.com/ja-jp/ All Rights Reserved.
Copyright (C) Akikazu Ishihara All Rights Reserved.
関連記事:
・ポニーのダイエット方法
・アルファルファに関する4つの誤解
・馬の飼養管理における7つの誤解
・乾草の高騰で代わりのエサは?