馬の退屈さを無くす6つの対策
馬の飼養管理 - 2023年07月12日 (水)

一般的に馬は、退屈になると、好ましくない行動を取ることが多くなります。多くの場合、退屈さにかまけた馬たちは、馬房の壁や水桶、放牧柵、馬着などを咬んで破壊してしまいます。また、サク癖や熊癖、旋回癖などの悪癖を覚えてしまう馬もいます。このような行動への対策としては、退屈さを無くしてあげることが、最も根本的な解決策であると言えます。
馬という動物は、自然な生活環境の中では、一日のうちの多くの時間を、牧草を食むことに費やすことが知られています。一方で、厩舎飼いされている馬では、そのような生活様式を取ることは難しいことが殆どです。しかし、少しでもそれに近い飼養体制を構築することで、退屈さから来る問題行動や悪癖を止めさせる、または、未然に予防できることが知られています。
参考資料:
Daniel Johnson. 6 Tips to Help Your Horse’s Boredom. Horse Illustrated. Articles, Horse Care, Horse Behavior, Stable Management: Dec 29th, 2022.

対策1:ヘイネット
多くの馬たちは、ヘイネットを楽しんでいるように見えます。ヘイネットの利点としては、飼料の摂食時間を長くすることがあげられ、単に退屈さを紛らわせるだけで無く、自然な生活スタイルに近い摂食行動様式になることで、疝痛の予防にも繋がります。
また、馬によっては、鼻先でヘイネットを左右に揺らして、乾草片がこぼれ落ちるようにする事もあり、ヘイネットそのものが、馬房内の遊び道具としての役目を果たすことがあります。通常、ヘイネットは安価ですので、退屈凌ぎに役立つかを最初に試してみても良いのかもしれません。

対策2:馬房遊具
馬房内に設置する遊具は、全く意識を向けない馬もいますが、中には、とても喜ぶ馬もいます。どの馬が遊具に興味を示すのか、そして、どんな遊具が有効なのかは、試してみるしかありませんが、遊具をエンジョイする馬にとって、それは大変に優れた退屈凌ぎになると言われています。
現代では、様々な種類の馬房遊具が市販されており、その多くは、柔らかいゴム製で、馬が踏んでも怪我の心配はなく、容易に口で掴んで振り回すことも可能になっています。また、遊具のサイズも多様であり、殆どの馬は、遊び方のコンセプトを短時間で理解すると言われています。

対策3:飼料遊具
馬によっては、前述の馬房遊具に、ヘイネットの効果を組み合わせて、飼料遊具を提供することで、より強い興味を持たせることが出来ます。これらは、犬用の遊具にも類似しており、内部に嗜好性の高いペレットやクッキーなどを入れることで、馬たちは、それを操作して、オヤツを得ることを楽しめますので、馬房遊具よりも長い期間にわたって効果が得られると考えられています。

対策4:音楽
馬が音楽を楽しんでいるかを確かめるのは難しいのですが、研究者によれば、馬の気持ちを落ち着かせる効果は得られることは分かってきています。実際のところ、厩舎内にラジオの音を流している時と、そうでない時で、馬の行動が明瞭な変化を示すようには見えないかもしれません。ただ、少なくとも、馬たちが音楽を嫌っているようには見えませんし、研究の結果を見ると、クラシックやカントリーの曲を耳にすると、馬が最もリラックスするという知見もあります。
音楽が馬の退屈さを緩和するかに関わらず、ラジオの音などがあることで、気が散る音を中和してくれる効能は期待されます。例えば、工事や伐採の騒音、厩舎作業で出てしまう音などを紛らわして、馬に対して、日常と変わらない環境であると感じさせることが出来ます(特に、普段から、飼い付けや馬房掃除の際に、厩舎内にラジオを流している場合には)。
その他には、寂しがり屋な馬では、仲間の馬(向かい合わせの馬房にいる馬など)が競技会等で留守になるときに、音楽をかけて静寂を無くし、寂しさを緩和できることもあります。また、様々な作業ノイズを中和する目的で、厩舎内に音楽を流すのが有効なケースも考えられます。

対策5:ブラシ掛け
馬の退屈さを減らす方策としては、定期的にブラシ掛けをするのも有効であり、馬房内で暇を持て余す時間を分割することが出来ます。多くの馬が、頻繁に手入れをしてもらうことを楽しむと言われています。
このため、馬が退屈している徴候があるときには、いつも通りのブラシ掛けの他に、全身をくまなく綺麗にして、タテガミや尻尾のグルーミング、四肢蹄の裏掘り、尾根の編み込みなども行ないましょう。手入れに充分に時間を掛けることで、馬が馬房でボーッと立ち尽くして、次はどの壁をかじろうかと考えるのを防いでくれるからです。

対策6:ゲームや芸
馬が多くの時間を持て余し、かつ、騎乗する以外で退屈さを凌ぎたいのであれば、馬と一対一で、ゲームや芸を教えることも出来ます。馬は賢い動物であり、お辞儀をしたり、微笑んだり、前掻きさせたり、指示通りに歩かせたり遊具を運ばせるなど、多くの芸を学習できることが知られています。これは、馬の知性を刺激するのに有益であり、まとまった時間を費やすことにも繋がります。

馬が馬房で過ごす時間は、退屈である必要はありません。上記のような対策を取ることで、馬が暇を持て余すことが無くなり、馬房壁や柵が破損することも無くなっていくでしょう。
Photo courtesy of Horse Illustrated. Articles, Horse Care, Horse Behavior, Stable Management: Dec 29th, 2022.
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