馬の文献:飛節内腫(Scruton et al. 2005)
文献 - 2023年07月14日 (金)

「健常馬の遠位足根関節固定術のためのドリル穿孔とレーザー処置の比較」
Scruton C, Baxter GM, Cross MW, Frisbie DD. Comparison of intra-articular drilling and diode laser treatment for arthrodesis of the distal tarsal joints in normal horses. Equine Vet J. 2005 Jan;37(1):81-6.
この研究では、飛節内腫の外科的治療法を確立させるため、六頭の実験馬の遠位足根関節に対して、関節内へのドリル穿孔またはレーザー照射処置を施した後、五ヶ月後までの経過評価と組織学的検査が行なわれました。
結果としては、レーザー処置よりもドリル穿孔のほうが、より堅固な関節固定が達成されたことが示されました。特に、ドリル穿孔を受けた関節では、三ヶ月目までに関節腔の線維組織充填が見られ、五ヶ月目までに骨架橋形成が認められました。また、皮下組織の炎症や跛行は、両群で有意差はありませんでした。
このため、馬の飛節内腫に対する外科的治療では、ドリル穿孔による軟骨掻爬を施したほうが、レーザー照射による軟骨焼烙に比べて、より早期に関節強直や足根骨間の癒合が達成されて、関節固定術の完了と疼痛緩和が期待されると考察されています。また、両手法による副作用には、臨床的に明瞭な差異は無いことも示唆されています。
この研究では、屠体肢に対するレーザー処置では、焼烙によって軟骨細胞の壊死が誘導されることが示されており、この影響は、ドリル穿孔よりも大きかったことが分かりました。このため、実際の臨床症例では、元々の軟骨組織の健常性が減退していることから、レーザー処置による組織侵襲の影響が相対的に大きくなり、今回の実験よりも迅速に関節固定が誘導される可能性もある、という考察がなされています。
他の文献では、ウェスタン競技馬の飛節内腫に対して、遠位足根関節のレーザー処置が施されて、健常歩様に回復した症例が96%(23/24頭)に上ったという報告があり、また、スタンダードブレッド競走馬の症例に対する治療においても、治療後にレース獲得賞金が向上したという成績も示されています(Hague et al. Proc ACVS. 2000)。ただ、この報告は、査読の無い知見で、ドリル穿孔との比較も成されていませんでした。
一般的に、関節腔に対するレーザー照射では、軟骨細胞を壊死させる効果以外にも、関節液を沸騰させることで、滑膜や関節包を変性させる作用も得られることが知られています。このため、実際の飛節内腫の罹患馬においては、ドリル穿孔にレーザー焼烙を併用することで、滑膜に分布する神経線維も変性させて、術後に速やかな疼痛減退の効能が得られる可能性はあると推測されています。
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