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敗血症の新生子馬におけるRPR値

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ヒト医療に小児科があるのと同様に、子馬の病気に対する獣医療では、成馬とは異なる知識と技術が必要になります。ここでは、敗血症を起こした新生子馬における、赤血球体積分布幅(RDW: Red blood cell distribution width)と血小板数の比率(RPR: RDW to platelet ratio)について調査した知見を紹介します。

この研究では、米国のカリフォルニア大学デービス校の獣医病院において、2012〜2021年にかけて診察された七日齢以下の新生子馬のうち、健常な症例(85頭)、病気だが敗血症ではない症例(149頭)、および、敗血症を発症した症例(83頭、敗血症スコアが12点以上)における、医療記録の回顧的解析が行なわれ、ROC曲線下面積(AUC)の算出によって、RPR値による敗血症の鑑別能の評価が実施されました。

参考文献:
Scalco R, de Oliveira GN, da Rosa Curcio B, Wooten M, Magdesian KG, Hidai ST, Pandit P, Aleman M. Red blood cell distribution width to platelet ratio in neonatal foals with sepsis. J Vet Intern Med. 2023 Jun 12. doi: 10.1111/jvim.16793. Online ahead of print.

結果としては、健常な症例に比べて、病気だが敗血症でない症例や、敗血症の症例では、血小板数が有意に低く、RDW値が高くなる傾向が認められました。このため、RPR値を算出すると、健常の症例(RPR=0.081)や、病気だが敗血症でない症例(RPR=0.085)に比べて、敗血症の症例では有意に高い(RPR=0.099)ことが分かりました。そして、RPR値のカットオフ値(RPR>0.09)を用いた敗血症の鑑別診断では、高い信頼性(AUC=82.1%)が達成されることが示されました。このため、新生子馬の敗血症においては、血液検査所見からRPR値を算出することで、鑑別診断の一助になる可能性が示唆されています。

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一般的に、赤血球体積分布幅(RDW)とは、赤血球体積の不均一性を表す指標で、赤血球の粒度ヒストグラムから計測されます。通常、RDW値の高さは、赤血球が大小不同になっていることの指標とされ、その測定値は、血液疾患の重篤度と正の相関を示します。一方、血中の血小板数は、播種性血管内凝固(DIC)などの敗血症の進行に伴って減少するため、その測定値は、血液疾患の重篤度と負の相関を示します。そして、RDW値を血小板数で割り算した値(=RPR値)を算出することで、両方の現象を反映させ、相補的に測定値変動の意味合いが増強されるため、敗血症の診断指標としての有用性が増すことが知られています。

この研究では、新生子馬の症例のうち、生存馬に比べて非生存馬の方が、RPR値が有意に高いという結果が示されました。そして、RPR値が0.0928以上であった場合には、入院の最初の三日間で死亡する確率が有意に高いというデータも示されています。新生子馬におけるRPR測定値は、敗血症の鑑別診断だけでなく、生存予測においても有用であることが示唆されました。ただ、両群の測定値には、相当なオーバーラップがあるため、RPR値のみで正確な生存率を予測するのは困難であると考察されています。

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この研究では、非生存馬の剖検所見は解析の対象とされていなかったため、RPR値の上昇が、どの臓器のどのような病態と相関しているかは分かりませんでした。しかし、ヒト医療では、新生児と成人の両方において、RPR値が炎症や線維化症の度合いに比例することが知られており、肝硬変、急性膵炎、重度な火傷、急性腎不全などの病態評価に有用であることが報告されています。このため、馬の獣医療においても、新生子馬だけでなく、全身性炎症反応症候群(SIRS)を併発している重度な疝痛症例においても、RPR値を算出することで、特定病態の鑑別診断や、包括的な予後判定指標になりうるのかもしれません。

Photo courtesy of J Vet Intern Med. 2023 Jun 12. doi: 10.1111/jvim.16793.

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このエントリーのタグ: 子馬 検査

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