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馬の文献:飛節内腫(Gough et al. 2010)

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「ティルドロネイト灌流による飛節内腫の治療:偽薬比較と二重盲検による試験」
Gough MR, Thibaud D, Smith RK. Tiludronate infusion in the treatment of bone spavin: a double blind placebo-controlled trial. Equine Vet J. 2010 Jul;42(5):381-7.

この研究論文では、馬の飛節内腫に対する内科治療の効果を評価するため、108頭の臨床症例に対する偽薬比較・二重盲検による試験を介して、ティルドロネイトの静脈内投与による治療成績が評価されました。

結果としては、ティルドロネイト投与の60日後における跛行グレードは2.6±1.7で、対照群(3.3±2.0)よりも有意に低く、つまり、跛行が改善していたことが分かりました(治療前のグレードは両群ともに4.5であった)。この研究は、臨床症例を対象にしたものであるため、リハビリ運動内容や抗炎症剤(フェニルブタゾン等)の投与は多様でしたが、多因子解析では、ティルドロネイト投与以外の因子は、統計的な有意性が無いことも示されています。

この研究では、ティルドロネイト投与の60日後におけるX線画像上の改善点としては(対照群と比較して)、関節周囲の骨棘形成が挙げられ、軟骨下骨の肥厚も改善傾向が認められました(p=0.064)。このため、飛節内腫の罹患馬に対するティルドロネイト投与では、疼痛を緩和する効能(症状修飾作用)だけでなく、骨棘形成で示される滑膜組織の炎症病態を改善する効能(疾患修飾作用)も期待できることが示唆されました。

この研究で評価されたティルドロネイトは、破骨細胞の抑制剤であるビスホスホネートの第二世代に含まれ、鎮痛作用と抗炎症作用があることが知られており、海外では、既定容量による舟状骨症候群への治療的投与が承認されています。一方、ヒト医療でのビスホスホネート投与では、骨壊死や骨折、腎毒性、低Ca血症などの副作用も報告されており、馬においても、長期的な経過追跡によって、有害作用の有無や発生率を解明する必要があると提唱されています。

この研究では、遠位足根関節の診断麻酔による歩様改善した症例に対してティルドロネイト投与が行なわれており、プラセボ(偽薬)との比較や盲検での評価を通して、飛節内腫における治療効果が証明されたと結論付けられています。しかし、同部位の診断麻酔により、起始部繋靭帯炎による歩様良化が認められてしまった症例が含まれていた可能性はある、という考察もなされています。

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