馬の文献:飛節内腫(Lamas et al. 2012)
文献 - 2023年08月18日 (金)

「エタノールを使った遠位飛節の骨関節炎の治療:24症例」
Lamas LP, Edmonds J, Hodge W, Zamora-Vera L, Burford J, Coomer R, Munroe G. Use of ethanol in the treatment of distal tarsal joint osteoarthritis: 24 cases. Equine Vet J. 2012 Jul;44(4):399-403.
この症例論文では、馬の飛節内腫に対する内科的療法の治療効果を検証するため、遠位飛節の骨関節炎を発症した24頭の馬に対して、エタノールの関節注射が実施され、継時的な歩様の変化が評価されました。
結果としては、長期の経過追跡ができた馬のうち、エタノールの関節注射によって、52%の馬(11/21頭)、60%の患肢(21/35肢)が歩様改善したことが分かりました(跛行グレードが半分以下になることを歩様改善と定義した場合)。なお、歩様悪化した馬は19%(4/21頭)であり、このうち、エタノール注射に関連した深刻な合併症(近位飛節の関節炎)を起こした馬は10%(2/21頭)であったことが報告されています。なお、この研究の初期には、100%エタノールが注射され効能が芳しくなかったため、殆どの症例に対して、70%エタノールの関節注射が実施されていました。
このため、馬の飛節内腫に対しては、エタノールの関節注射によって、中程度の予後が期待され、過半数の馬/肢において、跛行の改善が見られることが示唆されました。この研究で治療対象となったのは、関節麻酔に陽性を示して、X線検査で遠位飛節の骨関節炎が確認された馬でした。また、取り込み基準として、コルチコステロイドの関節注射から四ヶ月以内に跛行が再発した個体のみが含まれ、更に、左右両方の飛節が罹患していた馬が八割以上(20/24頭)となっていました。つまり、この研究では、飛節内腫が重度かつ進行していて、従来のステロイドの関節注射の効き目が限定的であった馬であっても、エタノール注射療法による治療効果が期待できることが示されました(治療肢の六割で歩様改善した)。
この研究では、エタノールの関節注射後にもX線検査が行なわれましたが、関節強直が完了したか否を画像上で確認するのは難しかった、と述べられています。また、過去の文献と同様に、エタノールの関節注射による歩様向上のメカニズムとしては、関節強直により飛節内腫の部位が安定化したことよりも、化学的に関節周囲の神経変性が起こったことによる影響が大きい、という考察が成されています。その根拠としては、エタノール注射の直後に歩様改善した馬が多かったこと、および、約一割の罹患肢において、注射後に一旦は歩様改善したものの、その後に跛行が再発していたことが挙げられています。
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