馬の文献:屈曲性肢変形症(Madison et al. 1994)
文献 - 2023年09月08日 (金)

「オキシテトラサイクリンが新生子馬の球節と蹄関節の角度に及ぼす効果」
Madison JB, Garber JL, Rice B, Stumf AJ, Zimmer AE, Ott EA. Effect of oxytetracycline on metacarpophalangeal and distal interphalangeal joint angles in newborn foals. J Am Vet Med Assoc. 1994 Jan 15;204(2):246-9.
この研究論文では、馬の屈曲性肢変形症に対する内科的療法の治療効果を検証するため、米国のフロリダ大学の獣医病院において、1991~1992年にかけて診察した35頭の新生子馬に対して、生後36時間内にオキシテトラサイクリンが静脈内投与され、その後、球節および蹄関節の角度が、X線画像上にて測定されました。
結果としては、オキシテトラサイクリンが投与された子馬の球節角度は、投与翌日に有意に減少したことが分かり(平均で156.8度から152.5度へ、約4度の減少)、生食や偽薬の投与群では、そのような角度減少は認められませんでした(これらの群では0.9~2度の角度増加)。ただ、オキシテトラサイクリンの投与群での球節角度は、投与の四日目までには、投与前の計測値まで戻っていました。一方、蹄関節の角度に関しては、オキシテトラサイクリン投与による有意な効果は認められませんでした。
一般的に、新生子馬に対するオキシテトラサイクリン投与では、キレート剤としてカルシウムイオンを吸着・減少させることで、浅指屈筋や深指屈筋を弛緩させる効果を示すことが知られており、その結果、浅屈腱や深屈腱から及ぼされる肢端への緊張が緩和されて、球節の角度減少に繋がったと考察されています。このため、屈曲性肢変形症の罹患子馬に対しても、オキシテトラサイクリン投与によって筋弛緩と腱緊張の緩和を施すことで、肢変形症を改善させる効能が期待されると考えられました。
この研究では、オキシテトラサイクリンの投与後に、経時的な血液検査が実施されましたが、腎機能に悪影響を及ぼした個体は認められませんでした。ただ、この薬剤の投与に際しては、特に脱水症状を呈した症例においては、重篤な腎毒性を生じるリスクがあることから、極めて慎重に泌尿器系機能を監視することが推奨されています。また、筋弛緩の作用自体は、短期間しか持続しないことから、運動療法や装蹄療法など、他の治療法を併用して、病態改善の増強を図ることが重要であると考えられます。
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