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馬の蹄を固くする4つのコツ

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ホースマンの中には、愛馬が頻繁に裂蹄してしまい、跛行することを繰り返してしまうので、蹄を固くする方法が無いか?という疑問を持たれている方もいらっしゃるかもしれません。ここでは、馬の蹄を固くする4つのコツを解説した知見を紹介します。

参考資料:
Katie Navarra. 4 Horse Hoof Hardening Tips. The Horse, Topics, Hoof Care, Hoof Cracks, Hoof Problems, Horse Care, Lameness: April 29th, 2020.



コツ1:飼養環境を衛生的に保つ。

馬が厩舎飼いなのか放牧飼養なのかに限らず、糞や泥が無く、乾燥しているエリアを提供することは、蹄の健康を維持するキーになります。牧草地で馬を飼養する場合には、飼い付けをする場所の水はけを良くすることで、蹄が乾燥する時間があるように努めます。一方、馬を舎飼いする場合には、敷料を衛生的に保ち、一日一回は必ず裏掘りをすることが大切です。もし、馬が泥やボロ、腐敗した乾草などの中に立ち続ければ、他にどんな対策を取ろうとも、蹄の質が低下するのは避けられないと言えます。

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コツ2:バランスの取れた飼料を給餌する。

裂蹄しやすい馬においては、獣医師や栄養士に相談して、その馬の飼養管理を見直すことが重要になってきます。もし、飼料の成分に過不足があれば、給餌内容や量の調整、および、サプリメントの飼料添加が推奨されます。殆どの馬においては、牧草やアルファルファから水溶性ビタミンBを摂取して、後腸の細菌叢が産生するビオチンによって、健康な蹄や体毛を維持することが出来ます。しかし、蹄が虚弱で脆く、頻繁に落鉄するような馬においては、ビオチンをエサに添加するのが有益な場合もあります。

ケンタッキーの蹄病専門家でリック・レドン氏は、一日あたり100mgのビオチンを摂取させることから始めて、数週間から数ヶ月で蹄の質が向上した後は、ビオチンの摂取量を一日あたり50mgとすることを提案しています。この際には、6~8週間おきに装蹄師に蹄の質が変化しているかを聞いてみることが推奨されます。

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ビオチンプラス(販売元:ジャパン・ギャロップス・インポーター)



コツ3:蹄の血液循環を促進させる。

蹄の成長には、血液循環を介して、蹄葉組織へ十分な栄養が供給される必要があります。そして、蹄壁や蹄底、蹄叉などに血液を循環させるには、物理的な要因が関与しています。レドン氏によると、蹄組織の脈管系を健常に保つことが、質が悪く、成長の遅い蹄においては大切になってくると提唱しており、馬が歩行するときに生じる蹄機作用が、蹄への血液循環を維持するのに不可欠であることが知られています。馬の蹄での血流維持には、騎乗運動だけでなく、一般的な活動量を維持すること、および、適切な蹄の削切を行なうことが重要となります。

通常は、四点削切法(4-point trim)と、蹄尖を短くして蹄反回を向上させる装蹄法によって、蹄底を深くして、蹄の成長を促す結果に繋がります。このような装蹄指針は、古典的なものとは少し異なり、深屈腱の緊張を緩和すること、および、蹄真皮細胞への血液供給を向上することに寄与するのが特徴であり、良好な治療効果を期待できることが知られています。

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コツ4:塗り薬は効くかもしれない。

蹄を固くする効能を謳った塗り薬には、賛否両論があるのが実状です。レドン氏によれば、蹄の湿潤が過剰であるケースでは、蹄を固くする塗り薬が有益である可能性もありますが、もしも、塗り薬の上から多量の泥が付着してしまうと、蹄の質を低下させるという悪循環が始まり、蹄壁の強度や耐久性がすぐに損なわれてしまいます。蹄が加湿状態になると、跖枕組織の安定性が失われて、そこに運動時の荷重負荷が加わることで、蹄踵が潰れてしまう事になるのです。


Horse Hoof Hardener by Keratex (写真クリックで販売元へ)



蹄を固くするために重要なこと。

以上のように、リック・レドン氏の助言を総括すると、蹄を固くする魔法のような方法は存在しない、というのが結論のようです。そして、裂蹄しやすい馬に対しては、飼養環境、飼料やサプリ、十分な活動量、適切な装蹄を施すことで、蹄を健康な状態に保つことが、蹄組織を固くしていく重要な方策であると言えそうです。

古典的にも、「蹄なくして馬なし(No hoof, no horse)」と言われるように、馬体を健常に保つためには、健常な蹄は必須となります。そう考えると、蹄組織の固さよりも健康状態を維持していくことが、蹄の管理を考える時に重要になってくるのかもしれません。

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参考動画:馬の蹄の健康を改善する方法


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このエントリーのタグ: 蹄管理 飼料 厩舎管理 蹄病 疾病予防

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