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馬の鼠径ヘルニアでの予後不良の因子

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後天性の鼠径ヘルニア(Acquired inguinal hernia)は、内鼠径輪から鼠径管に入り込んだ消化管が絞扼を起こす疾患です。馬においては、最も発生率の高い外ヘルニアであることが知られていますが、小腸絞扼が重篤になると、予後不良になることもあり、意外に怖い病気であると言えます。

下記の研究では、馬の鼠径ヘルニアにおける、予後を悪化させる因子を解明するため、ベルギーとフランスの二つの獣医大学病院において、2005〜2020年にかけて、後天性鼠径ヘルニアの診療が行なわれた98箇所の病変(97頭の症例馬)における、医療記録の回顧的調査および予後に関連する因子の解析が行なわれました。

参考文献:
Francois I, Lepage OM, Schramme MC, Salciccia A, Detilleux J, Grulke S. Clinical findings, surgical techniques, prognostic factors for short-term survival and long-term outcome in horses with acquired inguinal hernias: Ninety-eight cases (2005-2020). Vet Surg. 2023 Aug 31. doi: 10.1111/vsu.14023. Online ahead of print.

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この研究では、用手で鼠径ヘルニアが整復されたのは33%に留まっており、緊急手術での治療を要した病変が65%に及んでいました。この際、鼠径ヘルニアの再発予防のため、去勢手術が施されたのは68%でしたが、鼠径ヘルニアの再発率は11%に及んでいました。そして、小腸捻転を併発していた病変は27%に達していました。このため、馬の後天性の鼠径ヘルニアでは、その多くが緊急手術を要して、小腸捻転の発生率や、ヘルニアの再発率もかなり高く、決して油断できない疾患であることを再確認させるデータが示されたと言えます。

この研究では、鼠径ヘルニアの治療成績としては、生存して退院できた症例は60%に留まるという結果が示されましたが、退院できた症例を見ると、一年以上生存した馬は94%に達していました。また、治療した時点での疝痛の経過時間が10時間以下であった場合には、生存率は72%に達していましたが、疝痛の経過時間が10時間以上であった場合には、生存率は26%と大きく下がることが示されました。このため、馬の後天性の鼠径ヘルニアでは、死亡率が四割に及ぶほど危険な病気であることが再確認され、早期治療しないと予後不良になる症例が3/4近くに上ることが示唆されました。

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この研究では、治療された時点で頻脈を呈していたり、小腸捻転を併発していた場合には、短期生存率が有意に低くなることが示されました。このため、鼠径ヘルニアの初診時には、小腸絞扼の有無を正しく診断して、迅速な外科的治療の必要性を判断することが重要であることが再認識されました。また、症例が重種馬の場合にも、短期生存率が有意に低くなることが分かり、この要因としては、重種馬のサイズの大きな消化管が、腹圧の高さや、小腸脱出や絞扼の発生率の高さに繋がったためと推測されています。

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