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馬の昆虫刺咬性過敏症:精油スプレー療法

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馬の病気のなかでも、皮膚病は、目に付きやすい事もあり、ホースマンからの相談が多いものの一つです。このうち、馬のアレルギー性皮膚炎は、体躯や四肢に発疹や脱毛、掻痒感による自傷を起こして、ホースマンを悩ませる病気ですが、その原因として多いのが、吸血昆虫などの唾液成分がアレルゲンとなって発症する、昆虫刺咬性過敏症(IBH: Insect bite hypersensitivity)であると言われています。

ここでは、精油スプレー(Essential oil spray)の塗布によって、IBHの症状改善を図った知見を紹介します。下記の研究では、豪州のクィーンズランド大学の獣医病院において、IBHの確定診断が下された20頭の臨床症例に対して、精油スプレーまたは偽薬の塗布が実施され(無作為割り当て)、四週間にわたる臨床症状の継時的変化が二重盲検にて実施されました。

参考文献:
Cox A, Wood K, Coleman G, Stewart AJ, Bertin FR, Owen H, Suen WW, Medina-Torres CE. Essential oil spray reduces clinical signs of insect bite hypersensitivity in horses. Aust Vet J. 2020 Aug;98(8):411-416.

結果としては、IBHの罹患馬に精油スプレーの塗布を実施することで、掻痒感、擦過傷、苔癬化、脱毛などの臨床症状が有意に減少したことが分かりました。このうち、掻痒感が改善した馬は95%に及んでおり、掻痒感が完全に消失した馬も85%に達していました。また、皮膚の組織学的検査が行なわれた四頭では、その全頭で正常角化が起こっていたことが確認されました。そして、精油スプレーの塗布による副作用を示した馬は、一頭も居なかったことが報告されています。

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このため、馬のIBHに対しては、精油スプレーの塗布によって、アレルギー性皮膚炎の症状緩和が達成され、正常な角化を回復する馬の割合が高いことが示唆されました。一般的に、精油スプレーの成分には、アレルゲンとなる昆虫の忌避効果があることに加えて、肥満細胞の安定化作用、鎮痒作用、抗炎症作用などがあることで、IBHの症状改善に寄与していることが知られています。

しかし、馬のIBH対策としては、飼養環境中の昆虫の総数を減らすことを第一指針とすべきであり、精油スプレーは、あくまで補助的な方策に過ぎない、という認識を忘れるべきではないと言えます。具体的には、①小まめに馬房内や馬場の馬糞を清掃すること、②厩舎周囲や放牧場の排水路を整備して、ぬかるんだ場所を無くすこと、③厩舎の周りにツバメなどが巣作りできる場所を設置して、虫を捕食する野鳥を呼び寄せること(ツバメ1羽で一日に約千匹ほどの虫を捕食する)、などの方策が挙げられています。また、馬に虫除けのマスクや薄馬着を装着させたり、頻繁に薬用シャンプーで洗体することも、馬体に触れるアレルゲンを抑えるのに有益だと言えます。

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