馬の病気:椎間板脊椎炎
馬の運動器病 - 2013年09月09日 (月)

椎間板脊椎炎(Diskospondylitis)について。
椎体骨髄炎(Vertebral body osteomyelitis)とそれに続発する椎間板炎(Spondylitis)を生じる疾患で、新生児~子馬に好発することが知られています。椎間板脊椎炎の原因としては、新生児における不十分な移行免疫(Poor transfer of passive immunity)が挙げられ、椎体の骨幹端脈管(Metaphyseal vessels)が急なカーブを呈する部位において、細菌隔離(Bacterial sequestration)を起こして骨髄炎に至ることが病因(Etiology)であると考えられています。また、成馬においては、椎体の外傷性細菌感染(Traumatic bacterial infection)が原因となる症例もあります(特に頚椎において)。
椎間板脊椎炎の症状としては、初期病態では発熱(Fever)、頚部痛や背部痛(Neck/Back pain)、脊椎の強直(Vertebral stiffness)などが見られ、病状の進行に伴って、体重減少(Weight loss)、歩様失調(Ataxia)、正中上筋萎縮(Epaxial muscle atrophy)を呈する場合もあります。また、患馬は左右への首の屈曲を拒んだり、地面からの摂食を嫌がる仕草が観察される事もあります。
椎間板脊椎炎の診断では、椎骨のレントゲン検査(Radiography)による感染巣の発見が必要で、骨硬化縁(Sclerotic margin)に囲まれた不規則性の放射線透過域(Irregular radiolucent zone)が椎体内に見られます。また、椎間板隙の拡大(Enlarged inter-vertebral disc space)に伴う、椎体間の広範性放射線透過域(Diffuse radiolucent zone)が認められる症例もあり、これに続発する背側棘突起(Dorsal spinous process)の傾きによって、棘突起重複(Overlapping spinous process)を発症する場合もあります。胸椎や腰椎(Thoracic/Lambar spines)などの明瞭なレントゲン撮影が困難な領域においては、核医学検査(Nuclear scintigraphy)を介して放射医薬性取込(Radiopharmaceutical uptake)の増加を確かめる方法も有効で、また、超音波検査(Ultrasonography)によって脊椎周囲膿瘍(Peri-vertebral abscession)が確認できる症例もあります。
椎間板脊椎炎の治療では、全身性の抗生物質療法(Systemic antibiotic therapy)が行われ、超音波誘導生検(Ultrasound-guided biopsy)による検体を用いての細菌培養(Bacterial culture)と抗生物質感受性試験(Anti-microbial susceptibility test)によって、効能の高い使用薬剤を決定することが推奨されています。血液検査で移行免疫不全(Failure of passive transfer)が確認された子馬の症例に対しては、免疫抗体血清(Immune-antibody serum)の投与によって、防御機能の改善を施すことも重要です。感染巣が浅く、外科的アプローチが可能な症例に対しては、脊椎掻爬術(Vertebral curettage)と病巣清掃(Debridement)が試みられる場合もあります。
Copyright (C) Akikazu Ishihara All Rights Reserved.