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馬の文献:繋靭帯炎(Caminoto et al. 2005)

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「馬の後肢の実験的繋靭帯への体外衝撃波療法の微細構造や免疫染色的評価」
Caminoto EH, Alves AL, Amorim RL, Thomassian A, Hussni CA, Nicoletti JL. Ultrastructural and immunocytochemical evaluation of the effects of extracorporeal shock wave treatment in the hind limbs of horses with experimentally induced suspensory ligament desmitis. Am J Vet Res. 2005 May;66(5):892-6.

この研究論文では、馬の繋靭帯に対する体外衝撃波療法の作用機序を解明するため、10頭の実験の馬の両後肢に、コラゲナーゼ注射によって繋靭帯炎を実験的に作成し、右後肢の靭帯に対して衝撃波療法(三週間おきに三回)を実施して、エコー検査で病態経過を検査した後、衝撃波療法の四週間後には、両後肢の靭帯組織を生検で採取することで、微細構造と免疫染色的評価が行なわれました。

結果としては、治療の三週間後では、エコー検査での病巣サイズの割合は、衝撃波療法を受けた繋靭帯炎のほうが、無処置の繋靭帯炎に比べて、有意に小さくなっていました。また、治療の四週間後では、衝撃波療法を受けた繋靭帯炎では、無処置の繋靭帯炎に比べて、より細いコラーゲン新生が認められ、炎症誘発物質(TGF-beta)の活性も有意に優れていたことが分かりました。このため、馬の繋靭帯炎に対する衝撃波療法では、鎮痛作用だけでなく、靭帯の治癒過程を促進させる効能も得られることが示唆されています。

一般的に、馬の繋靭帯炎に対する衝撃波療法では、治療箇所の神経線維を破壊したり、神経伝達物質を枯渇することで、疼痛を減退させる効能は得られるものの(症状修飾作用)、靭帯炎の病態そのものを治癒させる(疾患修飾作用)という効能があるかは不明瞭とされてきました。今回の研究で確認された細いコラーゲンの新生は、衝撃波で線維芽細胞が刺激されて線維生成が刺激されたものか、衝撃波そのものが太いコラーゲンを分解したものである、という考察が成されています。

この研究では、馬の繋靭帯炎に衝撃波を当てることで、炎症誘発物質であるTGF-betaの活性増加が認められており、これにより、細胞外基質の生成や、線維芽細胞による治癒関連物質の合成(コラーゲン、GAG、フィブロネクチン)の促進が起こって、靭帯炎の治癒に寄与する結果に繋がると考察されています。過去の文献でも、実験的な繋靭帯炎に衝撃波療法を施すことで、治癒のスピードが上がったという複数の知見が示されています(Proc AAEP. 2000;46:127 and 2002;48:378)。ただ、この知見は、査読の無い学会発表でしたが、今回の研究では、組織学的検査にて評価したデータを、科学雑誌への論文として示した点で有益であると述べられています。

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