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馬の子宮内膜炎に対するオゾン療法

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一般的に、オゾンガスは、3つの酸素原子からなる同素体で、腐食性の高い有毒な気体ですが、その酸化作用によって、細胞膜の糖蛋白や糖脂質を標的とすることで、食品の殺菌目的に使用されています[1]。また、獣医療の領域では、牛の乳房炎における殺菌処置として応用されているほか[2]、オゾンが細菌のバイオフィルムを撹乱することから[3]、馬の子宮内膜炎での治療効果があるという報告もあります[4]。

そこで、下記の研究では、ドイツのハノーバー大学の獣医病院にて、子宮内膜炎を発症した30頭の牝馬に対して、トリメトプリム・スルファジトメジン(TMS)の全身投与と、オゾンガスの子宮内注入(48時間おき)の併用、TMSの全身投与のみ、または、空気の子宮内注入(対照群)を行ない(無作為割り当て)、一週間目における身体検査、子宮内膜のバイオプシー、エコー検査、細胞培養が実施されました。

参考文献:
Kohne M, Hofbauer L, Bottcher D, Tonissen A, Hegger A, Gorgens A, Ulrich R, Sieme H. Comparison of systemic trimethoprim-sulfadimethoxine treatment and intrauterine ozone application as possible therapies for bacterial endometritis in equine practice. Front Vet Sci. 2023 Jan 27;10:1102149.

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結果としては、治療後に細菌培養に陽性を示したのは、オゾン+TMS群では44%(4/9頭)、TMS群では30%(3/10頭)、対照群では60%(6/10頭)となっていました。また、オゾン+TMS群およびTMS群では、グラム陰性菌が分離された馬の割合が、いずれも有意に減少していたのに対して(治療前8/10頭→治療後及び2/9頭又は2/10頭)、対照群では治療前後で有意差が無かった(治療前4/10頭→治療後1/10頭)ことが分かりました。この際、オゾン+TMS群と対照群のあいだにも、統計的な有意差が認められました。一方で、子宮内膜のバイオプシーでの白血球数は、いずれの群でも、治療前後で有意差がありませんでした。

このため、馬の子宮内膜炎に対しては、抗生剤の全身投与と、オゾンの子宮内注入を併用する治療法が有用であると結論付けられています。ただ、このデータの見方によっては、TMSが投与されていれば、オゾンの子宮内注入による有意差は無く、オゾンによるバイオフィルム撹乱の作用は限定的であった、という解釈が成り立つのかもしれません。残念ながら、今回の研究では、オゾンの子宮内注入のみを行なった群は設定されておらず、オゾンガスそのものの効能を評価するには、改善点の残る実験デザインであったと言えます。

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参考文献:
[1] Guzel-Seydim ZB, Greene AK, Seydim A. Use of ozone in the food industry. LWT - Food Sci Technol. (2004) 37:453–60. doi: 10.1016/j.lwt.2003.10.014
[2] Ogata A, Nagahata H. Intramammary application of ozone therapy to acute clinical mastitis in dairy cows. J Vet Med Sci. 2000 Jul;62(7):681-6.
[3] Loncar KD, Ferris RA, McCue PM, et al. In vitro biofilm disruption and bacterial killing using nonantibiotic compounds against gram-negative equine uterine pathogens. J Equine Vet Sci. (2017) 53:94-9.
[4] Avila ACA, Diniz NC, Serpa RT, et al. Effectiveness of Ozone Therapy in The Treatment of Endometritis in Mares. J Equine Vet Sci. 2022 May;112:103900.

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