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高濃度ビタミンC療法による馬の抗酸化作用

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一般的に、成馬の重度疝痛(内毒素血症)や子馬の敗血症では、過剰生成された活性酸素種(Reactive oxygen species: ROS)によって、血管内皮の損傷や血管透過性の亢進を生じて、多臓器不全を続発することが知られています。そして、ROSに対する馬体の防御機構には、酵素系としてはグルタチオンペルオキシダーゼ、非酵素系としてはビタミンCやビタミンEが挙げられます。このうち、ビタミンC(アスコルビン酸)は、ROSスカベンジャーとして働くだけでなく、ROS生成酵素の抑制、血管内皮細胞の保護、体液減少性ショックの緩和などの機序を通して、抗酸化作用を及ぼすことが知られています。また、ビタミンCは、バソプレシン合成の補酵素として機能したり、直接的な抗炎症作用や静菌作用もあると言われています。

近年、ヒト医療では、このようなビタミンCの抗酸化作用が再注目されるようになり、高濃度ビタミンC療法(High-dose ascorbic acid therapy)によって、良好な敗血症の治療成績が示されています[1,2]。また、馬の敗血症モデルにおいても、高濃度ビタミンCの点滴によって、好中球減少症が緩和されたことから、自然免疫反応を増強させる作用があると考えられています[3]。そこで、下記の研究では、馬でのビタミンC投与による抗酸化作用を検証するため、八頭の健常な実験馬を用いて、高濃度ビタミンCを静脈内投与した後、血液の蛍光分析を介して、ROS代謝産物因子(dROM)、血漿抗酸化能、および、ROSの計測が実施されました。

参考文献:
Taylor SD, Hart KA, Vaughn S, Giancola SC, Serpa PBS, Santos AP. Effects of intravenous administration of ascorbic acid (vitamin C) on oxidative status in healthy adult horses. J Vet Intern Med. 2023 Nov 10. doi: 0.1111/jvim.16934. Online ahead of print.

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結果としては、高濃度ビタミンC投与の二時間後から、dROMの血中濃度が有意に減少したこと分かり、ビタミンCの血漿濃度は、用量依存性に高くなっていました。一方、高濃度ビタミンCの投与後にも、血漿酸化能やROS濃度(赤血球内在性と好中球刺激性の何れも)には有意な変動は認められませんでした。このため、馬に対する高濃度ビタミンCの静脈内投与では、有意な抗酸化作用が示され、内毒素血症や敗血症におけるROS誘発性の多臓器不全を予防したり、予後向上の効能が期待されると考えられました。なお、抗酸化作用が示されたビタミンCの投与量(100mg/kg体重)は、一般的なビタミン補給のための投与量(5~10mg/kg体重)に比べて、10~20倍も高い用量となっていました。

この研究では、検証されたビタミンCの投与量のうち、25および50mg/kg体重では、有意な抗酸化作用は検出されませんでしたが、今回は健常馬を用いた実験であったため、実際の内毒素血症や敗血症の罹患馬では、これらの投与量でも、臨床的に有意な抗酸化作用が示される可能性があると考察されています。また、血漿酸化能の測定値が有意に上昇していなかったのは、ビタミンCの血中濃度のピーク(投与五分後)と、血液分析(投与二時間後)とのタイミングの不一致に起因すると推測されています。なお、ヒト医療においては、50mg/kg体重のビタミンCの投与によって、敗血症における生存率の向上に繋がったことが報告されています[2]。

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この研究では、高濃度ビタミンC投与による副作用は認められず、実験馬の全頭が、投与から二年間以上にわたって健常に過ごしていると報告されています。また、他の論文においても、馬に対する高濃度ビタミンCの静脈内投与による副作用は報告されていません[3]。なお、これらの研究では、治療費を現実的な範囲に抑えるため、筋注用の薬剤が静注で投与されていましたが、それによる有害作用も無かったと述べられています。また、ヒト医療における高濃度ビタミンC療法でも、殆どの論文では安全性が示されていますが、一報だけ、急性腎不全を発症したとの知見があるため[4]、今後の馬における臨床応用に際しても、腎機能を慎重に評価することが推奨されています。

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参考文献:
[1] Patel JJ, Ortiz-Reyes A, Dhaliwal R, et al. IV Vitamin C in Critically Ill Patients: A Systematic Review and Meta-Analysis. Crit Care Med. 2022 Mar 1;50(3):e304-e312.
[2] Feng F, Yang H, Yang W, et al. Effect of vitamin C in critically ill patients with sepsis and septic shock: A meta-analysis. Sci Prog. 2021 Jan-Mar;104(1):36850421998175.
[3] Anderson MJ, Ibrahim AS, Cooper BR, et al. Effects of administration of ascorbic acid and low-dose hydrocortisone after infusion of sublethal doses of lipopolysaccharide to horses. J Vet Intern Med. 2020 Nov;34(6):2710-2718.
[4] McCune TR, Toepp AJ, Sheehan BE, et al. High dose intravenous vitamin C treatment in Sepsis: associations with acute kidney injury and mortality. BMC Nephrol. 2021 Nov 20;22(1):387.

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