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馬の文献:繋靭帯炎(Plevin et al. 2014)

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「若齢サラブレッド競走馬のレース成績に対する付着部繋靭帯炎の影響」
Plevin S, McLellan J. The effect of insertional suspensory branch desmitis on racing performance in juvenile Thoroughbred racehorses. Equine Vet J. 2014 Jul;46(4):451-7.

この症例論文では、馬の繋靭帯炎による競走成績への影響を検証するため、米国のフロリダ州において、2007~2010年にかけて、平地レースに使役された896頭のサラブレッド競走馬のうち、付着部繋靭帯炎を発症した85頭における病態と出走率の調査、および、58頭の発症馬(症例馬)とその異母兄弟(対照馬)での競走成績が比較されました。

結果としては、付着部繋靭帯炎の発症馬におけるレース出走率は66%(56/85頭)であり、非発症馬におけるレース出走率の89%(721/811頭)よりも明瞭に低く、この結果、非発症のほうがデビューできる確率が四倍以上も高い(オッズ比[OR]=4.2)ことが分かりました。また、年齢別に見ると、発症馬の二歳におけるレース出走率は27%(23/85頭)に留まっており、非発症馬の二歳におけるレース出走率の57%(465/811頭)よりも顕著に低くなっており、この結果、非発症のほうが二歳でデビューできる確率が三倍以上も高い(オッズ比[OR]=3.2)というデータが示されました。

この研究では、デビューを果たして異母兄弟がいた馬における競走成績を見てみると、生涯獲得賞金は、症例馬(2,966ドル)のほうが対照馬(3,973ドル)よりも有意に少なく、また、二歳での獲得賞金も、症例馬(2,068ドル)のほうが対照馬(2,183ドル)よりも有意に少なくなっていました(いずれも平均値)。また、デビュー時の日齢は、症例馬(1,085日)のほうが対照馬(972日)のほうが有意に多く、初出走が113日ほど遅れることが分かりました。ただ、競走能力の指標であるスピード指数を見ると、発症馬(78.8点)と対照馬(84.1点)のあいだで有意差は認められませんでした。

この研究では、繋靭帯炎の重篤度をグレード1~3に分けて解析されており、この結果、グレード2の付着部繋靭帯炎の発症馬を見ると、生涯出走数では、症例馬(3.5回)よりも対照馬(7.6回)のほうが有意に少なく、また、生涯獲得賞金でも、症例馬(3,218ドル)よりも対照馬(4,174ドル)のほうが有意に少なくなっていました。しかし、グレード1の発症馬を見ると、生涯出走数と生涯獲得賞金のいずれも、症例馬と対照馬のあいだで有意差はありませんでした(グレード3の発症馬では、サンプル数が足りず、統計解析は不可)。

このため、サラブレッド競走馬の付着部繋靭帯炎では、発症によってレース出走やレース成績に悪影響を及ぼすことが示唆されました。しかし、出走率や獲得賞金は、馬主または調教師の判断によるところが大きいため、繋靭帯炎の病歴を考慮して、繁殖転用される割合が高くなったり(デビュー率の低下に繋がる)、調教に長期間をかけたり(デビューの遅れに繋がる)、グレードの低いレースを選んだ出走させる(賞金額の低下に繋がる)などのバイアスが働いた可能性は否定できません。なお、競走能力の指標の一つであるスピード指数は、症例馬と対照馬で有意差が無かったものの、この指数も、長距離レースばかり出走していると数値が低くなりがちになるという偏向が働くため、繋靭帯炎が競走能力に影響しないことを示すエビデンスとしては、必ずしも最適な指標では無いのかもしれません(長距離レースでは、筋疲労と球節沈下から繋靭帯炎が再発しやすいと仮説されるため、発症馬を回避させる傾向にあった可能性もあるため)。

この研究では、付着部繋靭帯炎の有病率は9.5%(85/896頭)であり、発症肢としては、左前肢(全体の40%)が最も多く、次いで右前肢(22%)、左後肢(19%)、右後肢(19%)となっていました。また、内側と外側の繋靭帯付着部を比較すると、前肢の繋靭帯炎では、内側(55%)よりも外側(45%)の方が僅かに少なかったのに対して、後肢の繋靭帯炎では、内側(34%)よりも外側(66%)の方が明瞭に多くなっていました。

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