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馬の文献:蜂窩織炎(Farstvedt et al. 2004)

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「二頭の馬に発症した仮性結核症による顔面の蜂窩織炎と脂肪織炎の治療」
Farstvedt EG, Hendrickson DA, Dickenson CE, Spier SJ. Treatment of suppurative facial cellulitis and panniculitis caused by Corynebacterium pseudotuberculosis in two horses. J Am Vet Med Assoc. 2004 Apr 1;224(7):1139-42.

この症例論文では、蜂窩織炎の一つの病態として、仮性結核症(Corynebacterium pseudotuberculosis)による顔面の蜂窩織炎、および、脂肪織炎を発症した二頭の馬における、診断、治療、予後について報告されています。

一頭目の症例は、18歳齢のクォーターホース(騙馬)で、頭部への蹴傷による皮膚裂傷と膿瘍を起こして二次病院に搬入されました。検査では、頭部前面に広範な皮膚欠損、蜂窩織炎、肉芽増勢を認めて、細菌培養の結果から仮性結核症の診断が下されました。また、血液検査では、好中球増多症や貧血が見られました。治療としては、感受性試験の結果に基づいて、トリメトプリム・スルファメトキサゾール、および、フェニルブタゾンが投与され、病変の処置として、壊死組織の掻把術、1%イオジン液での消毒、三種抗生剤軟膏の塗布、および、バンテージ装着が実施されました。予後としては、入院五日後には退院して、一次診療での継続治療となり、三ヶ月後には皮膚病変が完治したことが報告されています。

二頭目の症例は、15歳齢のアラビアン(牝馬)で、銃創疑いの頭部外傷を起こして二次病院に搬入されました。検査では、耳の下方部位の皮膚欠損、および、壊死組織の肉芽増勢を認めて、細菌培養によって仮性結核症の診断が下されました。また、血液検査では、好中球減少症や高フィブリノーゲン血症が見られました。治療としては、一頭目と同様に、トリメトプリム・スルファメトキサゾールとフェニルブタゾンが投与され(感受性試験の結果から投与薬を選択)、壊死組織の掻把術と1%イオジン液での消毒を行ないました。更に、抗生剤と高張液を浸したガーゼでの被覆(抗菌及び浮腫軽減措置)を実施して、化膿性滲出液が減少した後、皮膚再生を促すバンテージ素材(Semiocclusive foam dressing)でのバンテージが行なわれました。そして、治療開始の30日後までに、皮膚欠損箇所が肉芽で充填されたことが報告されています。

一般的に、馬における仮性結核症は、潰瘍性リンパ管炎、表皮膿瘍、筋層内膿瘍(ハト熱やワイオミング腺疫)などの病態を取ることが知られており、複数の膿瘍形成を呈するのは25%の症例で、深部組織の膿瘍を呈するのは10%に過ぎないことが報告されています。このため、今回の二症例のように、頭部の皮膚欠損に至るような蜂窩織炎や脂肪識炎を起こすのは、比較的に稀な病態であると推測されますが、抗生剤投与による初期治療が奏功しない場合には、続発しうる一つの感染形態であることを念頭におく必要があると言えます。

この研究では、頭部の蜂窩織炎という稀な病態であったものの、治療成功の鍵は、抗生剤投与ではなく創傷措置にあったと結論付けられています。これには、壊死組織の除去、イソジン液による消毒(イソジン自体は皮膚再生には悪影響を与えにくいため)、浮腫軽減措置、皮膚再生促進のバンテージ素材等が含まれ、また、湿潤療法による肉芽増生の促進も、重要な治療方針であったと考察されています。

Photo courtesy of J Am Vet Med Assoc. 2004 Apr 1;224(7):1139-42.

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