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馬の背部痛に対する高強度レーザー治療

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一般的に、馬の背部痛(Back pain)は、診断麻酔や画像診断が難しく、有用な注射療法や外科的治療が少ないことから、難治性や回帰性の経過を示す病態が多いことが知られています。ここでは、レーザー治療による馬の背部痛への効能について、基礎的なデータを示した知見を紹介します。

下記の研究では、高強度レーザー療法(High Intensity Laser Therapy: HILT)による馬の背部痛への治療効果を検証するため、背部痛の臨床症状を呈したサラブレッド20頭(3〜4歳)に対して、背最長筋の片側のみにHILT処置を施して、皮膚温度と触診痛スコアが評価されました。

参考文献:
Zielinska P, Soroko-Dubrovina M, Dudek K, Ruzhanova-Gospodinova IS. A Preliminary Study of the Influence of High Intensity Laser Therapy (HILT) on Skin Surface Temperature and Longissimus Dorsi Muscle Tone Changes in Thoroughbred Racehorses with Back Pain. Animals (Basel). 2023 Feb 22;13(5):794.

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一般的に、生体に対する高強度レーザーの照射は、細胞損傷を起こすことなく、深部組織にエネルギーを到達させて、細胞活動亢進と血管拡張を誘導することで、照射した組織への血流を増加させることが知られています[1]。その結果、馬の腱靱帯損傷の治癒を促進させる効能が示されており[2]、飛節炎の疼痛や跛行を緩和させる効果も報告されています[3]。更に、高強度レーザー治療では、ヒトの筋肉緊張を減退させる効果があり[4]、馬の背部筋に対しても、レーザー照射と整体療法を併用することで、疼痛緩和させる効き目があることが示されています[5]。

この研究では、背最長筋への高強度レーザー治療によって、皮膚温が約2.5℃上昇して、触診痛スコアも有意に減少することが分かりました。また、皮膚温の上昇と、触診痛スコアの減少との間には、有意な負の相関が認められました(ただし、相関の度合いは強く、相関係数はマイナス0.07からマイナス0.18)。なお、皮膚温上昇や触診痛減少、および、これらの相関においては、棘突起衝突の有無による有意差は認められませんでした。

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このため、馬の背部痛に対する高強度レーザー治療では、筋肉痛を緩和する効能が期待されることが示唆されており、その際には、血流増加によって照射箇所の温度上昇を生じることが分かりました。ただ、今回の研究では、レーザーによる血流増加の作用が、どれくらいの期間にわたって継続するかは評価されておらず、また、温熱療法や抗炎症剤の投与、および、整体や鍼灸などの物理的治療と比べたときに、相対的に治療効果が優れているのか否かは検証されていませんでした。

Photo courtesy of Animals (Basel). 2023 Feb 22;13(5):794.

参考文献:
[1] Santamato A, Solfrizzi V, Panza F, et al. Short-term effects of high-intensity laser therapy versus ultrasound therapy in the treatment of people with subacromial impingement syndrome: a randomized clinical trial. Phys Ther. 2009 Jul;89(7):643-52.
[2] Zielinska P, Nicpon J, Kiełbowicz Z, et al. Effects of High Intensity Laser Therapy in the Treatment of Tendon and Ligament Injuries in Performance Horses. Animals (Basel). 2020 Jul 31;10(8):1327.
[3] Zielinska P, Sniegucka K, Kiełbowicz Z. A Case Series of 11 Horses Diagnosed with Bone Spavin Treated with High Intensity Laser Therapy (HILT). J Equine Vet Sci. 2023 Jan;120:104188.
[4] Lee, S.-K.; Lee, H.-O.; Youn, J.-I. Evaluation of muscle tension in hemiplegia patients with a real-time monitoring system during high intensity laser therapy. J. Opt. Soc. Korea 2015, 19, 277–283.
[5] Haussler KK, Manchon PT, Donnell JR, et al. Effects of Low-Level Laser Therapy and Chiropractic Care on Back Pain in Quarter Horses. J Equine Vet Sci. 2020 Mar;86:102891.

関連記事:
・馬の背部痛と後肢跛行に対する整体治療の効能
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・馬の背部痛での診断法と治療法の現状
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