fc2ブログ
RSS

馬の病気:喉嚢真菌症

20150728_Blog1_Guttural_Pouch_Mycosis_Pict1.jpg

喉嚢真菌症(Guttural pouch mycosis)について。

喉嚢の内側区画天井部(Medial compartment roof)に感染した真菌によって、内頚動脈(Internal carotid artery)と外頚動脈(External carotid artery)が糜爛(Erosion)して、中程度~重度の鼻出血(Epistaxis)を生じる疾患で、最終的に致死的な動脈破裂(Arterial rupture)を引き起こします。他の症状としては、迷走神経および舌咽神経(Vagus and glossopharyngeal nerve)の損傷に伴う嚥下困難(Dysphagia)、反回神経(Recurrent nerve)の損傷に伴う喉頭片麻痺(Laryngeal hemiplegia)と呼吸器雑音(Respiratory noise)、ホーナー症候群、耳下腺部圧痛(Parotid pain)、鼻汁漏出(Nasal discharge)、角膜潰瘍(Corneal ulcer)、失明(Blindness)、顔面神経麻痺(Facial nerve paralysis)、感染性環椎後頭関節炎(Atlantooccipital septic arthritis)などが報告されています。

喉嚢真菌症の診断は、喉嚢の内視鏡検査(Endoscopy)で下されますが、真菌病巣の大きさと病態の重度は必ずしも比例しない事が示唆されています。外科的療法の指針決定のため、どの動脈に真菌感染が起きているかを確認します。また、篩骨血腫(Ethmoid hematoma)や運動誘発性肺出血(Exercise-induced pulmonary hemorrhage)など、鼻出血を起こす他の疾患との鑑別診断(Differential diagnosis)を行います。軽度の出血のみを呈する症例では、気管支に血塊が迷入し、喉嚢開口部は正常に観察されることもあります。

喉嚢真菌症の内科的療法としては、内視鏡を介しての病巣洗浄と抗真菌剤投与が試みられる場合もありますが、約半数の症例において致死的動脈破裂を引き起こすため、喉嚢真菌症が確認され次第、速やかに外科的に動脈閉鎖(Arterial occlusion)を行うことが推奨されます。また、動脈閉鎖が奏功して真菌病巣が退行した後にも、神経症状の回復には長期間を要するため、可能な限り早期に外科的処置を実施することが大切です。

内頚動脈および外頚動脈を病巣近位部で結紮(Ligation)するのみでの治療法では、ウィリス動脈輪(Circle of Willis)からの血液の逆流(Retrograde flow)が起き、致死的出血を引き起こす危険が報告されています。内頚動脈に対しては、病巣遠位部での結紮も試みられていますが術野が深部におよび手技的に困難であるため、通常はバルーンカテーテル(Balloon catheter)もしくは経動脈コイル(Transarterial coil)を用いての動脈閉鎖が行われます。

外科的に動脈の完全閉鎖が達成された場合には、喉嚢内糜爛部の退行が見られることが多く、局所治療は必ずしも重要でない事が示唆されています。術後は1~6ヶ月で動脈病変の治癒と真菌巣の消失が起こることが報告されています。

Copyright (C) Akikazu Ishihara All Rights Reserved.

関連記事:
馬の文献:喉嚢真菌症(Lingard et al. 1974)
馬の文献:喉嚢真菌症(Freeman et al. 1980a)
馬の文献:喉嚢真菌症(Freeman et al. 1980b)
馬の文献:喉嚢真菌症(Caron et al. 1987)
馬の文献:喉嚢真菌症(Greet. 1987)
馬の文献:喉嚢真菌症(Freeman et al. 1989)
馬の文献:喉嚢真菌症(Freeman et al. 1993)
馬の文献:喉嚢真菌症(Davis et al. 1994)
馬の文献:喉嚢真菌症(Speirs et al. 1995)
馬の文献:喉嚢真菌症(Bacon-Miller et al. 1998)
馬の文献:喉嚢真菌症(Matsuda et al. 1999)
馬の文献:喉嚢真菌症(Leveille et al. 2000)
馬の文献:喉嚢真菌症(Lepage et al. 2005)
馬の文献:喉嚢真菌症(Ernst et al. 2006)
馬の文献:喉嚢真菌症(Delfs et al. 2009)
馬の文献:喉嚢真菌症(Archer et al. 2012)
馬の文献:喉嚢真菌症(Benredouane et al. 2012)
馬の文献:喉嚢真菌症(Dobesova et al. 2012)
馬の文献:喉嚢真菌症(Munoz et al. 2015)
馬の文献:喉嚢真菌症(Khairuddin et al. 2015)





関連記事

プロフィール

Rowdy Pony

Author:Rowdy Pony
名前: 石原章和
性別: 男性
年齢: アラフィフ
住所: 北関東
職業: 獣医師・獣医学博士
叩けよ、さらば開かれん!

質問、御意見、記事の要望等は下記まで
E-mail: rowdyponies@gmail.com

最新記事

ブログメニュー

馬の話題

馬の病気の話題
・蹄葉炎, 切腱術
・ナビキュラー症候群
・蹄病一般, 装蹄
・腱靭帯疾患
・背部/腰部/仙腸部疾患
・プアパフォーマンス
・消化器疾患一般
・胃潰瘍
・虚血再灌流障害
・呼吸器の医療
・神経疾患, 神経学検査
・クッシング病
・繁殖疾患と繁殖学
・皮膚病の医療
・眼科疾患, 眼科治療
・歯科疾患, 歯科治療
・寄生虫病
・高齢馬の医療
・子馬の病気や管理法
・子馬/若齢馬の長期的影響
・突然死
・症例シリーズ

馬の医療の話題
・疝痛の検査
・経鼻チューブ
・腹水検査
・疝痛の予防
・疝痛の手術判断と予後予測
・開腹術の手技や合併症
・疝痛の外科的処置
・疝痛の獣医療での地域差
・跛行検査, 画像診断
・関節鏡
・去勢, 泌尿生殖器
・抗生物質
・COX-2限定阻害薬
・破骨細胞抑制剤
・ショックウェーブ
・パーグ治療
・馬のハンドリング, 投薬
・バイオマーカー
・麻酔
・整形外科
・キャスト, ピンキャスト
・再生医療
・先端医療
・良い死(Euthanasia)
・馬の獣医療一般

馬の一般的話題
・馬の飼養管理一般
・飼養管理での病気/怪我の予防
・馬学一般
・ウマ社会の話題
・獣医学一般, 日常
・馬の飼料
・跛行と運動
・調馬索
・サク癖
・馬の行動学や悪癖
・ハミや馬具
・輸送
・怪我や事故の予防,対処法
・ホースマンの怪我と事故
・競馬での事故死や骨折
・馬とヒト, 伝染病, 馬動物学

馬の診療シリーズ

サイト内タグ一覧

FC2カウンター

リンク

カレンダー

01 | 2024/02 | 03
- - - - 1 2 3
4 5 6 7 8 9 10
11 12 13 14 15 16 17
18 19 20 21 22 23 24
25 26 27 28 29 - -

推薦図書

月別アーカイブ

お断わり

20130414_Blog_Message_Pict1.jpg
このサイトに掲載されているイラスト、画像、文章は、すべて管理主自身が作成したもの、もしくは、著作権フリーの素材リンクから転載したものです。

カテゴリ

全記事表示リンク

アクセスランキング

[ジャンルランキング]
学問・文化・芸術
30位
アクセスランキングを見る>>

[サブジャンルランキング]
自然科学
3位
アクセスランキングを見る>>

FC2ブログランキング

天気予報


-天気予報コム- -FC2-

検索フォーム

QRコード

QR