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馬の病気:喉嚢鼓張症

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喉嚢鼓張症(Guttural pouch tympany)について。

喉嚢内に空気が溜まる疾患で、新生児~当歳齢までの子馬に発症し、オスよりもメスに好発することが知られています。先天性もしくは、上部気道炎症(Upper airway inflammation)や筋肉機能不全などに起因して形成された喉嚢開口部粘膜フラップが、一方通行弁(One way valve)の働きをすることで発病すると考えられています。重篤な鼓張を生じた症例では、呼吸困難(Dyspnea)、嚥下困難(Dysphagia)、吸気性肺炎(Inhalation pneumonia)などを併発します。

喉嚢鼓張症の診断に際しては、臨床症状、視診、触診で無疼痛性の頚部膨満を確認することに加えて、内視鏡検査(Endoscopy)によって咽頭圧潰(Pharyngeal collapse)と咽頭炎(Pharyngitis)の重症度を調べます。また、X線検査によって喉嚢の鼓張を確認する手法も有効ですが、片側性か両側性かの鑑別は、左右喉嚢の内視鏡検査を要することが示唆されています。

喉嚢鼓張症の治療では、留置針穿孔を用いての除圧(Decompression)によって、一時的な症状軽減(Temporary alleviation)が見られますが、根治療法のためには外科手術が必要です。片側性(Unilateral)の病態では、ヴァイボーグ三角域(Viborg’s triangle region)の切開創またはホワイトハウス変法(Modified Whitehouse approach)を介して、正中隔開窓術(Median septum fenestration)を施すことで、溜まった空気を反対側の正常喉嚢へと誘導して除圧(Decompression)を行います。両側性(Bilateral)の病態では、耳管内側薄膜(Eustachian tube medial lamina)と辺縁粘膜フラップを切除して、喉嚢開口部を拡張する手法がとられます。また、全身麻酔を使わず起立位手術(Standing surgery)を行う場合には、内視鏡の生検導管(Biopsy channel)を介してのレーザー手術によって、咽頭陥凹部瘻孔(Pharyngeal recess fistula)もしくは耳管咽頭瘻孔(Salpingopharyngeal fistula)を形成する術式も報告されています。耳管咽頭瘻孔は自然治癒閉鎖しないように、術後にカテーテルを留置することが推奨されます。

喉嚢鼓張症の予後は殆どの症例において良好で、二次性の喉嚢蓄膿症(Secondary guttural pouch empyema)が起きた場合、除圧に続いて自然治癒することが多いですが、神経損傷に起因した嚥下困難や誤嚥性肺炎(Aspiration pneumonia)を起こすと予後は不良となることが示されています。

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