馬の病気:真菌性肺炎
馬の呼吸器病 - 2015年07月30日 (木)

真菌性肺炎(Fungal pneumonia)について。
馬の真菌性肺炎の原因菌としては、ブラストマイセス菌(Blastomyces dermatitidis)、コクシディオイデス菌(Coccidioides immitis)、クリプトコッカス菌(Cryptococcus neoformans)、ヒストプラズマ菌(Histoplasma capsulatum)、アスペルギルス菌(Aspergillus fumigatus)、カンディダ菌(Candida albicans)等が分離されます。肺組織が原発性真菌感染(Primary fungal infection)を起こすことは稀で、多量の真菌への曝露(Excessive fungal exposure)、湿性環境(Moist environment)、長期間に渡る抗生物質投与、免疫低下状態(Immunosuppressive condition)などが発症素因として挙げられています。
真菌性肺炎の症状としては、慢性発咳(Chronic coughing)、食欲不振(Anorexia)、体重減少(Weight loss)、運動不耐性(Exercise intolerance)、鼻汁排出(Nasal discharge)などが見られ、病態の進行に伴って頻呼吸(Tachypnea)と呼吸困難(Respiratory distress)を呈します。また、コクシディオイデス菌感染症例では胸水貯留(Pleural effusion)が見られる場合もあります。ブラストマイセス菌感染では、肺炎に併行して、肛門、陰唇、乳房等に膿瘍形成(Abscess formation)を引き起こす可能性がある事も知られています。
真菌性肺炎の診断では、気管気管支吸引液(Tracheobronchial aspiration)を用いての真菌培養(Fungal culture)が行われますが、アスペルギルス菌は健常馬の気管支にも存在するため、確定診断(Definitive diagnosis)には気管支肺胞洗浄液(Bronchoalveolar lavage)もしくは肺生検(Lung biopsy)を使用しての原因菌分離も試みられます。生検針による穿刺は重篤な出血を起こす危険があるため、胸腔鏡検査(Thoracoscopy)を介して、安全かつ正確に病変部位からの検体採取を行う方法も報告されています。胸部X線検査(Thoracic radiography)では、球状腫瘤(Circular mass)、間質性パターン(Interstitial pattern)、結節性パターン(Nodular pattern)、浸潤性パターン(Infiltrative pattern)などが観察されます。また、ELISA法を用いて血清中の抗体価を測定したり、PCR法を用いて原因菌を特定する手法も試みられています。そして、免疫低下に起因する真菌性肺炎を疑う症例では、免疫グロブリン量の測定も行われます。
真菌性肺炎の治療としては、ポリエン系抗生物質(Amphotericin B, nystatin, natamycin)に、細胞膜透過性を亢進させる(Increase cell permeability)効果のあるエルゴステロール(Ergosterol)が併用されます。また、異所性ステロールを蓄積(Aberrant sterol accumulation)させる効果のある抗真菌剤(Miconazole, Ketoconazole, Itraconazole, Fluconazole, Voriconazole)の投与も有効です。イオジン溶液の全身投与によって、肉芽腫性炎症の抑制を期待する補助的療法も試みられていますが、限定された治療効果(Limited efficacy)しかないことが報告されています。
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