馬の病気:変性脊髄脳炎
馬の神経器病 - 2015年08月01日 (土)

馬変性脊髄脳炎(Equine degenerative myeloencephalitis: EDM)について。
脊髄の退行性疾患(Degenerative disorder)で、六ヶ月齢以下の子馬に多く見られ、ビタミンE欠乏症(Vitamin E deficiency)に起因すると考えられています。病因論としては、ビタミン吸収不全などの遺伝性素因(Genetic predisposition)を持つ個体が、環境性酸化体(Environmental oxidants)に曝露し、ビタミンEをはじめとする抗酸化体(Antioxidants)を有しない場合に、脊髄組織の変性壊死を引き起こすと仮説されています。
馬変性脊髄脳炎の発症馬は、対称性の歩行失調(Symmetric ataxia)、固有受容性欠陥(Proprioceptive deficit)、虚弱(Weakness)、痙攣(Spasticity)などを呈しますが、EDMに特異的な症状ではありません。一般的に、前肢と後肢において同程度の神経症状を示し、内視鏡検査(Endoscopy)での喉頭機能異常の発現も報告されています。
馬変性脊髄脳炎の診断では、脳脊髄液(Cerebrospinal fluid)の検査において、僅かなCK濃度の上昇を除いて、異常所見は見られません。また、血清のビタミンE濃度の低下が、診断の目安となる場合もあります。神経症状の発現と他の疾患(EPM、CSMなど)を除外することで推定診断(Presumptive diagnosis)が下されますが、確定診断(Definitive diagnosis)は死後病理検査によってのみ可能です。
馬変性脊髄脳炎の治療としては、ビタミンE補助剤(Vitamin E supplementation)の給与が行われますが、慢性進行性に経過する病態であるため、神経症状が完全に回復する症例はあまり多くありません。そして、発症馬の牧場の他の個体に対しても、ビタミンEを給与することが推奨されます。
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