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地球温暖化と蹄葉炎

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地球温暖化(Global warming)によって蹄葉炎(Laminitis)の発症の危険が高まる可能性があるのでしょうか?(International League for the Protection of Horses in Jurga Report, Horse Health Headlines, April 8, 2008)

馬の栄養管理の専門家達によるプレスリリースによれば、気候変化(Climate change)によって四季の気温の変動幅が小さくなり、季節が互いに混合(Season merging)しはじめると、牧草が一年を通じて成長しやすくなり、冬季と夏季の牧草に含まれる栄養素量が均衡化することが予測されています。その結果、年間にわたって放牧飼養されている馬達にとっては総摂取カロリーが増加することになり、甲状腺機能低下症(Hypothyroidism)やインシュリン耐性(Insulin resistance)を引き起こし易くなると提唱されています。

蹄葉炎の病因論は未だにハッキリと特定されていませんが、ひとつの発症メカニズムとしては、インシュリン耐性によって蹄葉状層組織(Hoof laminar tissue)がブドウ糖欠乏(Glucose deprivation)を起こし、壊死剥離(Necrotic separation)に至るという学説があります。内分泌系に異常をきたす、クッシング病、甲状腺機能低下症、代謝性症候群の羅患馬において、合併症として蹄葉炎を発症することが多いのはこの理由によると考えられています。つまり、地球温暖化によって、本来は栄養に乏しいハズの冬場の牧草もカロリー過多となるため、結果的に内分泌機能の異常と蹄葉炎を続発する危険が高くなる可能性が論じられているのです。

もちろん現段階では、気候変動によってどの程度の牧草カロリーの増加が起こるのか、仮にカロリー量が増えたとしても本当にインシュリン耐性に影響が出るのか、また、例え馬の内分泌機能に変化が起きたとしても実際に統計的に有意な蹄葉炎発症率の増加が起きるのか否かは科学的に証明されていません。しかし、最近の世界情勢を見ても、CO2量減少の目標値を記した京都議定が軽視されるなど、地球温暖化に対する先進国の取り組みは決して活発であるとは言えないのではないかと思います。

馬に限らず、多くの飼養動物や野生動物が悪影響を受ける地球温暖化について、世界中の国々がもっと大きな目を持って、考えていくことが必要な時が来ているのかもしれません。

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