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銃創

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日本よりも米国の馬獣医のほうが多く目にする疾患としては、EPMや西ナイル熱などがありますが、銃創(Gunshot wound)もその一つではないかと思います。

銃社会のアメリカでは、ハンティング期間中に猟銃で誤って銃撃されてしまう馬をはじめ、発砲事件に巻き込まれてしまう警察馬や、イタズラ半分に放牧中の馬を撃つという残酷な事件もあります。特に散弾銃などの銃創では、術中の透視装置(Intra-operative fluoroscopy)やレントゲン撮影等を用いながら、何時間も掛けて細かい破片を摘出しなくてはならず、また、術後の細菌感染などの合併症も多く見られ、銃創による馬の致死率は四割近いことが報告されています。

アメリカでは、大統領の暗殺および暗殺未遂事件や、中学&高校での乱射事件が頻繁に起きているにも関わらず、銃規制は遅々として進んでいません。この要因としては、憲法第二条を個人の銃器所持の肯定と解釈する『個人的権利説』を連邦最高裁が採用していること、全米ライフル協会による政治的圧力が強く銃規制の法令否決が繰り返されていること、などが挙げられます。

しかし、他の要因としては、米国は極端な格差社会で治安が良い国とは言えず、また、国土がとてつもなく広く、警察のみによる治安維持には自ずと限界があります。このため、現実問題として、銃を完全に無くしてしまうと、郊外の一軒家などには安心して住めなくなってしまうという事情があるのだそうです。実際、田舎での銃所持は比較的簡易であるものの、都市部への銃持ち込みを違法としている州はかなりたくさんありますが、検問などで銃所持を完全に摘発するのはほぼ不可能です。結局は、国民全員の銃所持を禁止できない以上、正当防衛の手段として国民全員に銃所持の権利を与えるしか方法が無いのだと思います。

極めて個人的意見としてですが、銃社会のアメリカを安全にしていく方法は、教育制度の充実しかないのではないかと思います。銃器があることはもちろん大問題ですが、命の大切さを考えず安易に拳銃を使ってしまう人がいることも、銃犯罪が減らない大きな理由なのだと思います。たった数発の核弾頭を持つ北朝鮮が、何千発の核兵器を所有する米露よりも危険なのは、独裁政権で兵器使用に対するシビリアンコントロールが機能していないからに他なりません。これと同じことが銃器の使用にも言えるのではないでしょうか?

残念ながら米国には、貧困のため充分な基礎教育を受けられないマイノリティの割合が、まだまだ高いと言えます。銃購入の自由を制限できないなら、例えば銃弾の値段を今の何十倍にも値上げして、その割り増し分を教育支援予算に当てる方法もあります。これならば、銃弾の代金の元が取れない強盗目的の銃使用を減らせるという利点もあるかもしれません。

人類最高の友人である馬が、凶弾に倒れる事件が減ることを願わずにはいられません。

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